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第111話・その後のアスタイル王国


「三ヶ国は、あの条約と密約を

 受け入れたそうです」


国際会議から2週間ほど経って、

アスタイル王国の王城に呼ばれた

俺たちは、


国王代理であるステラ様から、

その後の状況を報告された。


「そうですか―――

 ホッとしました。


 特に気になっていたのは、

 シュロランド教国でしたので」


俺がそう胸をなでおろすと、


「シーライド王国にはスフィアさんが、

 グレメン国には雨霧あまぎり君のシンパが

 いるから問題無いと思うけど」


「まあでも、教国はある意味元凶みたいな

 ものですし……

 下手に動かず今は従うという名の、

 様子見みたいになったと思います」


武田さんとスフィアさんが、

俺の付き人みたいに両隣りに立って語る。


しかしシンパって言われてもなぁ。

俺、彼らを弟子にした覚えは無いんだけど。


「ステラ様、国王陛下の容態は?」


白波瀬しらはせさんが心配そうに

たずねると、


「どうも長期間毒を盛られていたようで、

 完治には時間がかかるとの事です。


 ですが命に別条はなく―――

 しばらくは治療に専念すると。


 それと、アンク王女とグリーク宰相が

 召喚者たちにした事を、詫びておられ

 ました」


「まあ、あの2人が黙らせようとした

 人ですからね。


 こちらとしては謝罪をしてくれた

 だけでも御の字です」


今度は熊谷くまがやさんが彼女に返す。


「私も、人質となっていた母と姉が

 解放されました。


 皆様には感謝してもし切れません」


ステラ様が深々と頭を下げ、こちらも

慌ててそれを止める。


「お、お止しください。

 それよりも国際会議を取り仕切って

 くださり、助かりました。


 こちらの思い通りに事が運びましたしね」


「あのくらいの協力であれば、いつでも……


 しかしこれで、本当に世界は変わるので

 しょうか?」


俺の言葉の後に、彼女は疑問を示し、


「まあ20年ありますからね。

 じっくりやっていきます」


「異世界の文化、ですか?

 それらを本格的に取り入れて生活を

 豊かにすれば、心持ちも変わるで

 しょうから。


 特に私もあの子たちも、もうあの

 食事無しでは生きられません!」


武田さんとスフィアさんがステラ様に答え、


「娯楽とメシにはちょっとうるさい

 民族だからね」


「ゆっくりちょうきょ……

 もとい文化や習慣を変えていって

 やりましょー♪」


熊谷さんと白波瀬さんが笑顔で語る。


「後は、あの密約の真意に―――

 各国が気付いてくれれば、ね。


 特にシュロランド教国がね~……

 どうしても気付かなければ、後で

 手を回す必要があるかも」


俺が頭をガシガシとかくと、


「まるで雨霧様は、老獪ろうかいな政治家の

 ようですね。


 よろしければ、グリークの後釜あとがまとして

 宰相をやって頂けませんでしょうか?

 そうなれば父も安心すると思いますので」


「あ!

 じゃあアタシ、秘書に立候補します!」


「そっそれなら私も―――

 シーライド王国の者でも大丈夫

 ですよねっ!?」


そう言って俺の両腕に2人はしがみつき、


「おお、モテモテだね」


「ここ、一夫多妻認められているし、

 養うためにも宰相になればー?」


「絶対本気で言ってないでしょ!?」


からかうように話す熊谷さんと

白波瀬さんに、俺は抗議するように答え、


その光景をステラ様は微笑みながら

見ていた。




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