制服姿のままのユーリは狙撃銃を両手で抱えながら、じっと三人の方を伺う。
そっと手を差し出す
「大丈夫。助けに来たんだよ」
すざくがそう小さな声でさとす。
銃口が震える。
ゆっくりと、そしてゆっくりと
柔らかく、大きなユーリの体を抱きしめる
「......ロシア......みんな......殺される......」
嗚咽の合間に聞こえるユーリの声。
「仲間がか?」
「赤軍......皆殺しにする。パルチザン。年寄りも赤子もみんな......殺す」
ニコライエフスクの記事を思い出す
貨物室は暗く、そして冷たい。
「僕に、この船に乗って日本まで来た理由は何なんだい?」
「
「
やさかが腕を組みながら、そう分析する。それをすぐ言葉で伝えられないことが、ユーリの能力の限界を示していた。
「僕の助けが必要、か」
難しそうな顔をして、ユーリをそっと撫でる
「魔法少女は一個大隊に相当する戦力だ。ましてユーリは――その気になれば騎兵連隊を足止めできるほどの実力の持ち主。それが、僕に助けを求めるというのは」
「敵も『魔法少女』というわけですね」
うん、とやさかの声にうなずく
「赤軍――ロシア革命軍が魔法少女を使っているとは初耳だ。共産主義と我々魔法少女は相性が悪いはずだが」
近代的な理想社会を目指す科学的社会主義と、古の魔法を操る不死の少女。たしかに正反対の存在とも言えた。
「連中にとって見ればわれわれはラスプーチンの一党か、ポールドニツァの化身でしょうからね」
「ポールドニツァ?」
すざくがやさかに質問する。
「すざくさま、ポールドニツァとはロシアの民話に出てくる妖怪です。暑い中仕事をしている納付を、美しい少女が手に持ったかまで命を刈りとってしまうという――」
ひえっとすざくは声を上げる。
「まあ、世界各地で魔法少女の認識なんてそんなもんさ。だいたい、子供が悪いことをしていると『魔法少女が来るよ』と親が言うのは世界共通らしいしな」
そういいながらユーリを抱きしめながら立ち上がる
その時、やさかは背中に感じる。それは新たなる『魔法少女』の存在を――