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第83話 事故報告書:温泉タブレット

事故報告書


王国歴435年蝉の月4日

魔法兵器開発局技術顧問クレノ・ユースタスより、国王陛下に謹んでご報告申し上げます。この度、当開発局にて取り組んでいた魔法兵器の試作において、重大な事故が発生したことを深くお詫び申し上げます。

以下、事故の内容について詳細に報告いたします。


1 事故概要


発生日時:王国歴435年蝉の月3日

発生場所:魔法兵器開発局運動場

事故状況:午後14時頃、休憩中であった魔法兵器開発局実験部隊隊員五名が『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』を、差し入れとして持ちこまれた『元気で~る1号(栄養補助食品)』と誤認し、誤飲した

被害状況:『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』を飲みこんだ隊員の体内で大量の湯が湧出し、呼吸不全を起こした


2 発生原因


魔法兵器開発局にて開発された『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』と、出向中の魔法開発局員が持ちこんだ『元気で~る1号(栄養補助食品)』の形状が酷似していた


3 発生状況


・午後13時30分 定刻通り訓練終了

・午後13時40分 魔法兵器開発局のフェミニ主任研究員が休憩中の隊員五名と接触

・午後13時45分 『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』と『元気で~る1号(栄養補助食品)』の取り違い、誤飲が発生

・午後14時 隊員一名(シャネル軍曹)が誤飲した『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』が体内の水分と反応、口から大量の湯を噴出させる

・午後14時5分 ハルト少尉へ報告

・午後14時10分 ハルト少尉から技術顧問へ報告

・午後14時20分頃 癒しの法による救命活動開始

・同時刻 他四名からも湯の噴出を確認

・午後14時40分頃 ストック枯渇により救命が困難になる

・同時刻 フェミニ主任研究員による救命活動開始

・午後15時頃 事故状況が収束、隊員五名を搬送する


4 今後の対応

・搬送後、被害を受けた五名はいずれも療養中

・うち四名は二~三日の自宅療養

・うち一名は経過観察のため七日間の入院を要する診断が下る

・事故の主たる原因である『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』に関する研究開発を一時的に中断する


5 再発防止策

 ・『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』の形状を変更し誤飲防止のための各種施策を行う

 ・兵士たちに配布される飲食物について管理体制の見直しを行う


6 反省点


 本事故が発生した原因は多岐に渡るが、すべては魔法兵器開発局によって開発された『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』と魔法開発局によって開発された『元気で~る1号(栄養補助食品)』の形状が酷似していたことに帰結すると思われる。


 また『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』を誤飲すると重大な事故につながる恐れがあると予測できたにも関わらず、その形状を飲食可能な形態にしていたことも事故の遠因であると言わざるを得ない。よって『試作魔術式鉱泉湧出促進錠』に関する研究開発は一時的に中断し、誤飲を防ぐ措置を検討する。


 現在、形状を大きくして一口で飲みこむことを防ぐ措置、食欲を欠く色素を加える措置、炭を加えて強い苦みを加える措置、飲食厳禁である旨を記した特殊な容器に保存する措置などを検討中である。


 さらに兵士たちの手に渡る持ち物・飲食物に関して、事故を発生させる要因がないかどうか再検討を行う。外部からの持ち込みに関しても管理を徹底し、責任者によってあらかじめその形状を把握できるようにすることが必須であると思われる。



 今回の事故を重く受け止め、魔法兵器開発局として深く反省するとともに、再発防止と責任の遂行に全力を尽くす所存です。

 以上、取り急ぎご報告とお詫びを申し上げます。

 ヨルアサ王国万歳。王家に栄光あれ。


王国歴435年蝉の月4日

魔法兵器開発局

開発局顧問および技術試験隊顧問

クレノ・ユースタス技術中尉



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