『空飛ぶ鯨号 試験評価報告』
本兵器は兵員および物資の移送を、陸路でも海路でもなく、空路を用いて行うための大型魔法兵器である。本兵器は乗員と貨物を積載するための胴体と飛翔を担う主翼によって構成され、最高二十メートルを飛翔することが可能である。こうした形態の兵器を今後、魔法開発局では飛行機、輸送目的に作られたものを輸送機と呼称する。
閲兵式前日に行われた評価試験において『空飛ぶ鯨号』は安定した飛行性能を発揮し、目標高度に到達せり。しかしながら、周知の通り鯨号は評価試験中に第三者が故意に引き起こした事故により大破せり。
かかる任務失敗による魔法兵器開発局への損害は甚大なり。
しかしながら『空飛ぶ鯨号』が本評価試験において、その性能を十分に発揮し、航空兵器の未来を切り開いたことは、第十二演習場に集まった誰もが知るところである。
よって本任務の失敗は、決して本兵器に秘められた可能性を損なうものではないと推察せり。今一度、本兵器の取り扱い方法及び安全管理を徹底し、再度評価試験に臨めば、本兵器は当初想定さる通りの評価を得られるものと愚考する。
今後、魔法兵器開発局は『空飛ぶ鯨号』の再建を目標とし、開発計画を進めるものとする。
以上の評価をもって本兵器の報告とする。
願わくは、今後の魔法兵器開発局の研究開発が栄えあるヨルアサ王国地方軍の資とならんことを望む。
王国歴435年、向日葵の月一日
魔法兵器開発局
開発局顧問および技術試験隊顧問
クレノ・ユースタス技術中尉