やり始めてかれこれ2時間。まったく会話がない。俺は数学をやってるから特に分からないところもなく、すらすらと進んでいる。それは桜も同じこと。マルチプレイヤーである桜も、分からないところなどない。むしろ分からない問題を持ってこいと言われた方が困るだろう。
「もうそろそろ休憩にしない?」
「そうだな、この問題終わったらな。」
「じゃあ私もこの問題終わったら。」
休憩前ラストの三元一次方程式を解き終わって、少し伸びをする。桜もまったく同じ問題をやっていたらしく。先に終わった俺のノートを見て唸っていた。
「最後、同じ問題だったから解くスピード勝負しようと思ったのに、負けた。理系ってなんかムカつく。」
「俺からしたら、古文すらすら訳せるお前の方がムカつくぞ。」
「あれは慣れよ慣れ。」
「計算も同じようなもんだ。」
俺はおもむろにスマホを開き、凝った首を鳴らす。ゲームの1つを開いて、『loading』と表示されているのを眺める。
「私も入るから待ってて。」
「おけ。」
桜も同じゲームを開き、リーグバトルの画面に移った。
「6で入れよ。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。」
「いけたかな?」
「まあ見たら分かるもんさ。」
今回のステージは本当に障害物の少ないほぼ直線の氷の平地ステージ。数秒後に今回のチーム分けが映し出される。
「あっ、同じチームだ。どうする?どこから攻める?」
「相手アタッカーだらけだから、前線行くわ。援護よろしく。」
俺が使うのは、アタッカーに攻撃したら攻撃力上昇と体力回復がついている優れもののうるちゃん。後ろから援護する桜が使うのは、ほぼ100%、動けなくする状態異常がつけれて、なおかつ体力回復できるペロス兄。あと、味方にはZや夢もいるので、攻守共に揃ったメンバーだ。相手は犬が2人、若ドフィが2人と俺のうるちゃんにとっては格好の標的になるキャラが表。『よろしく』スタンプを押して、試合が始まった。
まず俺はC旗を取りに行く。普通に走っていると、正面から紅蓮が飛んできたので、それをジャス回。通常一発で相手の無駄回避を誘い出す。相手は範囲攻撃を仕掛けて来たので、それから逃げるように突撃スキルで移動して距離をとる。相手の1陣にたどり着き、若ドフィと対面した。すぐに糸を降らしてきたのでそれをまたジャス回。通常攻撃で攻撃力を上げつつ、相手がよろけたところにスキルをぶち込む。相手の特性のKO回避を使わせて、もうあとは無い状況に持ち込む。ほぼゼロ距離で構えていた俺に、相手は無駄回避を使い距離を取り、シールドを開いたが、俺はそれの内側に入り、最終的にはノーダメでKOした。すぐに相手1陣に入り、旗を抜く。あとはここで耐えるだけ。後ろでは緑シャンと桜のペロス兄が奮闘して、もうすぐ相手2陣も取りそうだった。
「そっち取れそう?」
「多分いける。そっち行こうか?」
「よろしく。流石に4対1はキツいわ。」
「おけ。」
俺は相手4人の攻撃をを上手く回避しながら、少しずつ削っていく。今の相手キャラには状態異常無効がついているキャラがいない。よって、桜のナメクジは全員に当たり、全員が動けなくなる。
「貰っていい?」
「ダメ。私の体力回復させて。」
「はいはい。早くメイデン開いて倒しちゃって。」
画面にはこちらの勝利までのカウントダウンが始まる。桜はちまちまと相手の体力を削っていき、ラスト3秒の時にまとめてKOした。
「ナイス〜!」
「今の良かったな。」
「久志の攻めが成功してるの久しぶりに見た。」
「失礼な。」
リザルトを少し見てから、俺たちはまたスマホを置き、シャーペンを持った。