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第23話 DAY17

 今日から数日は、私と久志しか家にいない。杏ちゃんは合宿に行ってるし、紀乃はまた旅行に行っている。だからこその…


「ただ今より、うちの家主、Qの断髪式をやりたいと思います!」

『イエェーーイ!』

「いぇーい。」


久志の断髪式をRINEビデオ通話で中継している!見ているメンバーはもちろんKYUKA組。画面に映る数の関係で、奏っちと楓は同じ画面に映っている。


『QもよくOKしたね。』

「OKはしてないぞ。ただ、押し通された感じだ。」

『可哀想に。』

「そう思っているのになぜ見る?」

『興味本位だよ。』


私もまったく良い友達を持ったものだ。同級生の散髪を見たい友達ができるなんて。こいつらが変わってるだけなのかな?


「じゃあ、どこから切ってく?」

『まずはその無駄に長いもみあげのところかな?』

「じゃあ、切ってくね。」

「おい、ちょっ、待てって。心の準備がまだだ。」

「必要?」

「当たり前だろ!」


ハサミを構えた私を手で制止する。一息ついたところで、大胆に切る。


『うお〜!』

「なんの歓声だよ。」

『だって、Qの邪魔そうなもみあげがスッキリしたからね。』


楓が少し興奮した様子で言う。私は反対側に回って、同じ長さに切る。


『うお〜!』

「さっきと同じじゃねぇか。」

『Qは分かってないな。髪型は両側揃って綺麗になるもんだよ。』


奏っちは頷きながら言う。さて、あとはこのこんもりした髪の毛をどうしようか。とりあえずといて、ちゃんと揃えて、やっぱり長さ、決めづらいな。


『Qって、セットしないといけない髪型にしても、どうせ寝癖直すだけでしょ。変にこだわらずに普通に切ったら?』

『俺もそう思うぞ。』

『私も同じ〜!』


画面の向こうのオーダー通りに、さっぱりするように切っていく。長さは、金木研くらいになってきたか。


『前髪、もうちょっと切っちゃったら?』

「いいね、音羽。今のまんまじゃ、目見にくいまんまだもんね。」


ちゃんと長さを揃えてから前髪に移る。パッツンにされるのは嫌だと思うから、ハサミを縦方向にして、すいていく感じで。長さがだいぶ短くなって、目がはっきりと見えるようになった。頬がほのかに赤いのは気のせいだと思う。あとはすきばさみですいていって、完成だ。


『おおおぉぉぉ!すごい!こんなに髪型で印象違うんだ!Qって目見えるようになると、イケメンにだね。』

『男の俺でも惚れ惚れするぜ!』

『ちょっと待っててね、カレン呼んでくる。カレーン!Qが別人になった!』


我ながら申し分ない出来だ。左右のバランスもしっかり取れているし、寝癖直しだけで決まる髪型。久志がくせっ毛だから、金木研みたいな感じの雰囲気がプンプンしている。そしてみんなも満悦そうでなによりだ。


「これで杏ちゃんもビックリするね。」

「あいつは俺の昔の頃も覚えているからな、そこまでじゃないか?」

「絶対ビックリするから。」


そんなことを話しながら道具を片付けて、散らばった髪の毛を掃除機で吸う。


 RINE通話を切ってからお風呂を入れて、久志に先に入らせる。しっかり髪の毛を落とさないとね。上がってきて、ドライヤーで乾かして出てきた久志は、もう別人だった。


「隻眼の王だ!」

「やめろ。照れるじゃねぇか。」


久志は後頭部を掻きむしる。それでも髪の毛が落ちてしている感じでは無かった。ベットに髪の毛が散乱することは無さそうだ。


 そのあと私たちは、晩御飯を食べて、軽くゲームして、少し早めに寝た。

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