旅の終わりというものはいつも寂しい。木々の隙間から見える川も、喉の奥に残っている甘い空気も、俺を送り出しているようで。
今年の夏がもうすぐ終わる。このまま家に着いて、明後日、学校に行くだけだ。1ヶ月ぶりの学校。楽しみなようで、あまり気が乗らない。この夏が楽しかったからだろうか。それなら、こいつらと一緒にいて良かったと思える。
車に揺られて1時間後、馴染みのある景色に帰ってきた。着いたのは海南さんの家の前。
「ありがとうございました。」
「忘れ物しないようにね。」
車から降りるといつもの匂いが鼻の奥に刺さる。帰ってきたんだ、枚方に。
「それじゃみんな、明後日な!」
『バイバイ!』
俺と桜、きいが車から降りて手を振る。アスファルトの地面を踏みしめて坂を登り、きいの家の前に着く。
「じゃあな。寝坊するなよ。」
「分かってるって、ひい君。明後日ね。」
きいと別れ、隣は桜だけになる。まだ2時過ぎ。夏の暑さが押し寄せてきて、少し息が切れる。
「また、来年もこうして過ごせたらいいね。」
「そうだな、来年も再来年も、ずっと。」
今までずっとなんか考えたことなかった。なのに、このメンバーはそのことを考えさせてくれる。やっぱり俺、楽しいんだな。
「「ただいまぁ!」」
「2人ともおかえり!昼ご飯食べるよね。作るから待ってて。」
「よろしく!」
家に帰ると、杏が出迎えてくれた。クラブ終わりだからか、少し髪が湿っている。疲れもあるだろうに、ご飯を作ってくれるらしい。まったく、できた妹だ。たぶん、お代は面白い話とかだろうな。
部屋着に着替えてリビングに戻る。テーブルにはラーメンが置いていて、杏はテレビを見ていた。
「お待たせ。杏ちゃん、ありがとう!」
「伸びちゃうから早く食べて。」
杏に催促され、俺たちは向かい合わせに座り、ラーメンを啜り始める。こういうのは、日常って感じがして、より帰ってきた感が増したように思う。
食べ終わって器を洗った後、コーヒーを淹れた。甘いクッキーをポリポリと食べながら、それを飲む。
「バカ兄、この夏は楽しそうだったね。」
「まぁ、楽しかったな。」
「話は聞かなくても、その顔だけで、どれくらい楽しかったのか分かるから、別に何も聞かないよ。でも、私もどこか連れてって欲しかったな〜。」
「分かったよ、来年な。」
こいつらとの付き合いは長くなりそうだからな。来年もあるのはほぼ確定だろう。
俺の夏休みがもうすぐ終わる。