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第10話 そしてキツい課題は再び出された①

 文化祭が終わって、最初の音楽の授業。Qと回れてなかなか楽しかったが、少し嫌な予感がする。俺は青春を謳歌しすぎている。今までの俺には考えられないほどに。


 ホワイトボードの前にいる磯浦仁(通称イソジン)はなぜか笑顔だった。彼女といいことでもあったのかな?それなら拍手を送ってあげよう。


「えーっと、今日は自習です。というより、課題を出します。」


まさか、まさか…


『作詞作曲してみよう!パート2!』


アァァァァァァ〜アッ、アッ、ア。


『嫌だぁ〜!』


教室のあちこちから声が聞こえてくる。あんな地獄の課題、もうやりたくねぇよ。


「おぉ、嬉しそうな叫び声が聞こえてくるねぇ。これは期待出来そうだな。あと、これが2学期の平常点の8割を占めるから、ちゃんとやるんだよ。」


この鬼め。末代まで呪ってやる。


 イソジンが出て行ったあと、俺たちは、いやクラスの全員がQの周りに集まった。


『由良、助けて!』

「ごめん、今回ばかりはやめておくわ。テーマ的に作りにくい。」


出されたテーマは『文化祭』。今年は文化祭マジックが少なかったみたいだから、これといったネタがない。少し悔しそうな顔を浮かべるQを見て、クラスメイトは散っていった。残ったのはいつもの6人。


「危なかったぁ。」


Qはそう言って机の中からメモを取り出す。そこには、まだ短いが、歌詞が書かれていた。


「お前、まさか。」

「あぁ、騙せてよかった。イソジンが出て行った瞬間に嫌な予感がして、隠しておいたんだ。」


あっ、こいつ悪いやつだ。


「だってそうだろ。十中八九、桜と組むことになるんだから。ボーカルできいも入れると思うけど。」

「よろしく、久志。」

「私が歌うからって難しい曲作らないでよ。」


2人はQの横に椅子を持ってきて、音楽の方向性を決めている。こっちも何か考えないとな。


「おい、奏。早く来いって。」

「お、おう。」


楓が俺を呼んでいる。この宿題のことだろう。まさか、また書けとか言われるんとちゃうやろな。考えるだけで少し寒くなってきた。


「じゃあ、作詞が奏で、作曲が私。メインボーカルは音羽でいい?」

「いいぞ。嫌だけど。」

「私もいいよ。」


こちらのメンバーも決まる。俺が作詞担当か。Qも同じだな。そして、やることといえばこれだけ。


「勝負だ!Q!」

「望むところだ。」


俺は初めてQに喧嘩を売った。

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