文化祭が終わって、最初の音楽の授業。Qと回れてなかなか楽しかったが、少し嫌な予感がする。俺は青春を謳歌しすぎている。今までの俺には考えられないほどに。
ホワイトボードの前にいる磯浦仁(通称イソジン)はなぜか笑顔だった。彼女といいことでもあったのかな?それなら拍手を送ってあげよう。
「えーっと、今日は自習です。というより、課題を出します。」
まさか、まさか…
『作詞作曲してみよう!パート2!』
アァァァァァァ〜アッ、アッ、ア。
『嫌だぁ〜!』
教室のあちこちから声が聞こえてくる。あんな地獄の課題、もうやりたくねぇよ。
「おぉ、嬉しそうな叫び声が聞こえてくるねぇ。これは期待出来そうだな。あと、これが2学期の平常点の8割を占めるから、ちゃんとやるんだよ。」
この鬼め。末代まで呪ってやる。
イソジンが出て行ったあと、俺たちは、いやクラスの全員がQの周りに集まった。
『由良、助けて!』
「ごめん、今回ばかりはやめておくわ。テーマ的に作りにくい。」
出されたテーマは『文化祭』。今年は文化祭マジックが少なかったみたいだから、これといったネタがない。少し悔しそうな顔を浮かべるQを見て、クラスメイトは散っていった。残ったのはいつもの6人。
「危なかったぁ。」
Qはそう言って机の中からメモを取り出す。そこには、まだ短いが、歌詞が書かれていた。
「お前、まさか。」
「あぁ、騙せてよかった。イソジンが出て行った瞬間に嫌な予感がして、隠しておいたんだ。」
あっ、こいつ悪いやつだ。
「だってそうだろ。十中八九、桜と組むことになるんだから。ボーカルできいも入れると思うけど。」
「よろしく、久志。」
「私が歌うからって難しい曲作らないでよ。」
2人はQの横に椅子を持ってきて、音楽の方向性を決めている。こっちも何か考えないとな。
「おい、奏。早く来いって。」
「お、おう。」
楓が俺を呼んでいる。この宿題のことだろう。まさか、また書けとか言われるんとちゃうやろな。考えるだけで少し寒くなってきた。
「じゃあ、作詞が奏で、作曲が私。メインボーカルは音羽でいい?」
「いいぞ。嫌だけど。」
「私もいいよ。」
こちらのメンバーも決まる。俺が作詞担当か。Qも同じだな。そして、やることといえばこれだけ。
「勝負だ!Q!」
「望むところだ。」
俺は初めてQに喧嘩を売った。