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第4話 初日

 ジリリリっとけたたましい音に目を覚まして、時計を見る。


「まだ7時前やん。もうちょい寝よ。」


私は二度寝の態勢に入る。もうちょっとで寝れそうな時。


―ピロン


今度はスマホが鳴った。身体を無理矢理動かして、スマホを取る。ひい君からだ。


『きい、起きてるか?今日から学校だぞ。』


学校?学校、ガッコウ、がっこう…学校!


「まだ用意してなーーい!」


とりあえず宿題と筆記用具とお金と鍵をリュックの中に詰める。ブラウスだけはなぜかアイロンをかけてあった。久しぶりに制服に袖を通す。昨日までの休みが夢みたいだ。まだちょっとぼーっとしている頭を無理矢理働かせて、リビングに降りる。


「おはよ。ママ、パパ。」

「紀乃、おはよ。ご飯できてるよ。」

「紀乃が起きてきたから、俺はもう行かないとな。行ってきます。紀乃も気をつけてな。」

「うん、いってらっしゃい。」


パパは7時ぐらいに家を出るから、入れ違いになることが多い。


「紀乃、今日寝坊しかけたでしょ。」

「バレてたか。」

「あんなけドタバタしてたら誰でも。いつもよりも5分ぐらい遅いし。早く食べないと遅れるよ。」

「本当だ!」


私はご飯を流し込んで、髪を整える。今日は気分を変えてハーフアップ?ポニテもありかな?いや、気合い入りすぎか。やっぱりいつも通り下ろしておこう。


「憂鬱だなぁ。」


冬休み、あんなに楽しんじゃったから余計にそう思う。3学期はイベントもないし、ただ冬を乗り越えるだけ。雪でも降ってくれたらな。


 ブレザーを着て、マフラーをする。外はこれでも寒いけど、しょうがないな。


「いってきます!」

「いってらっしゃい。」


軽い足取りで、ひい君との待ち合わせ場所まで歩く。マフラーの裏で吐いた息は白くなって、消えてなくなる。顔はちょっとチクチクしてくるし、やっぱりカラッとした冬の日は嫌いだ。


「まだだよね、そりゃあ。」


待ち合わせの10分前だから、さすがにひい君は来てないか。やっぱり早く来すぎたかな?スマホでも触って2人を待っておこう。


「よう、今日は早いんだな。」


後ろから声がした。振り返るとひい君と桜がいる。嬉しさを抑えながら笑顔を作った。


「おはよ、ひい君。今日も寒いね。」

「きいはどうせ家から出てないんでしょ。」

「バレたか。」


何気ないこの登校も、この2人となら少し楽しい。こんなに寒い空も、暖かい色で色付いていく。桜よりもちょっとだけ、ひい君に近いところで歩く。ひい君の左側だけは誰にも譲れない、私だけの特等席だから。

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