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第12話 白兎after

 昔の私との最後の夢を見たその日の放課後、私は悩んでいた。


「今ならいい曲書けそうなのに、全く降ってこない。」


今までも、何回も書こうとはした。でも、いい歌詞が浮かんでこず、出来るのはありきたりなポエムだけ。今日こそはいいのが浮かんでくると思ったのにな。


「やっぱり、私には無理か。」


諦めて、ベッドに入る。それでも、中々寝つけないでいた。


『私を見つけてよ』


耳元で誰かが囁いた気がした。横を見てももちろん誰もいない。


『ちょっと寂しいからさ』


次は脳に直接語りかけるように、聞こえてくる。でも、


「いいの思いついた、と思う。」


私は再び体を起こして、ペンを持った。


『淡く溶けてく 記憶の中

 涙の音だけが微かに

 聞こえてくる 秒針を刻むように


 言葉じゃきっと 表せないもの

 破れたこのメモで紡ぐよ

 本当は何も分かっちゃいないけど


 自分の型に 自分の過去に

 囚われたままで何になれる?

 忘れてほしい 忘れたくない

 割と単純なのでもいいじゃない


 私を見つけてよ ちょっとだけ寂しいからさ

 傷ついた声は 虚空に消えて

 白く濁った 今までの

 私のこの手から 溢れるほどの幸せよ

 今は何処を彷徨ってるの? 教えてよ

 My White Rabbit



 遠く消えゆく意識の中

 廃れたこの瞳で見るよ

 どこまでも欺瞞的な世界


 自分の音に 自分の声に

 乗せられたままで何が見える?

 私が誰か知りたくても

 割と分かってないんじゃない?


 私を見つけてよ ちょっとだけ寂しいからさ

 傷ついた手首 わざと隠して

 偽ってた これからの

 私のこの腕でも 抱えきれない喜びを

 今は何で諦めてるの? 知ってるでしょ?

 My White Rabbit



 信じられない 信じたくない

 忘れられない 忘れたいの

 この世界で 輝く色が

 恐ろしいから

 君のために 私のために

 独りじゃないように

 全力で否定するから いいんでしょ?

 Dear. My Rabbit

 My White Rabbit

 独りにはさせないよ

 My White Rabbit』


突然降ってきた歌詞。久志みたいな世界観は書けないけど、今私ができる1番の歌詞ができた。本当ならすぐには久志に店に行きたいところだけど、ちょっと恥ずかしいからいいや。


 いっぱい心配かけたし、迷惑もかけた。それでも、いつも通りに接してくれるみんなのことは信じていいよね。



○○○○○


 桜の様子がおかしくなってから書き進めていたメモ。ただ思いついたことを、殴りつけるように書いた言葉は、少しずつ曲になり始めていた。


『最近友達の様子が変なんです

 声をかけても返事しないことがよくあるし

 最近友達の様子が変なんです

 最近寝れてないみたいだし


 あぁ心配だなぁ あぁ心配だなぁって

 考えても 何も変わらないけど

 あぁ心配だなぁ あぁ心配だから

 今日またずっと君のことを考えてるよ


 僕の友達はちょっと弱くって

 だけど見栄っ張りだから無理して

 今宵君の眼から涙がこぼれ落ちる前に

 僕は君を救いたいんだ



 最近友達の様子が変なんです

 声をかけても振り向かないことがよくあるし

 最近友達の様子が変なんです

 最近授業中も寝てるし


 あぁ心配だなぁ あぁ心配だなぁって

 思っても何も変わらないけど

 あぁ心配だなぁ あぁ心配だから

 今日もまたきっと君のこと思ってるよ


 僕の友達はちょっと弱くって

 だけど負けたくないから無理して

 今宵君が明るい朝を迎えられるように

 僕は君を救いたいんだ



 僕の友達はちょっと弱くって

 いつも心のどこかでできるって過信して

 僕はそれが叶うようにレールを引くだけ

 ほら、君は笑った』


久しぶりに、桜の歌詞を書いた気がする。でも、桜のことを考えていると、なんか落ち着いた。

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