「おまたせ〜。」
江住先生の声がして振り返る。ヒーローは遅れてやってくるとでも言うのだろうか、江住先生とうちのエースの太地先輩が来た。ホテルのスタッフと思われる人が全員揃ったのを確認すると、ホテルの使用について説明が始まる。
「そこにあるサーバーは自由に使ってもらって構いません。部屋は広いですが、枕とか投げることのないようにお願いします。それじゃあ3日間よろしくお願いします。」
「おーしゃす。」
部屋に上がって荷物を置く。少し遅れているから、晩飯と風呂を合わせて45分ほどしかない。少し急ぐとするか。
晩飯はバイキング。種類こそ少ないが、味は申し分ない。数制限があって量を食べれないのがあるが、他のでカバーできそうだ。出来ればぶりの照り焼きとかはいっぱい食べたいが、家でつくれるしな。
できる限り早く食べて風呂に入る。思ったより広くて使い心地も良さそうだ。
『ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』
湯船に浸かって、全員で同じような声を出す。温度がちょうど良くて最高だ。
「温泉に浸かると皆おじさんになってしまうのはなんでだ問題!」
「イェーイ!」
こんなどうでもいいことを話したくなるくらいに。
風呂から上がって、ラウンジで明日の予定を確認する。6時に玄関に集合して軽く体を動かしたあと、6時15分から朝食。そのあと7時に玄関にまた集合して会場に向かうという流れだ。そんな先生の説明を、俺はホットカプチーノを、かー君はジンジャーエールを、他2人は紅茶を飲みながら聞く。若干先生が苦笑いしてたような気もするが、気のせいだろう。
また部屋に戻って、明日の用意を済ませてから俺は漫画を開いた。
「加太、何読んでるん?」
「あぁ、『僕らはみんな可哀想』です。読みます?」
「今日はいいわぁ。明日時間あったら読むわぁ。」
「待ってますよ。こっちの世界で。」
太地先輩も少しリラックス出来たのか、そんな話をするようになってきた。
「それで、ホンマに寝ぇへんのぉ?」
「どうしても眠なったら寝ますよ。俺は。ピー也は知らないですけど。」
「寝ないのはいいけど、静かにしてやぁ。」
「了解です!」
ピー也はなんかボイチャしてるけどほっておこう。そのあとも布団を敷いて、晩餐のセッティングをしてから漫画を読んでいた。
コンコンとノックされて、俺たちは鍵を開ける。江住先生だ。
「じゃあ、明日6時ね。ちゃんと寝るんやで。特にDistanceの2人。」
「「はーい!」」
今年1じゃないかと思うほどの返事をして布団に潜り込む。もちろん起きる気満々だ。
先生が出ていって丁度10時になったので、太地先輩が電気を消す。同時に、俺のモバイルバッテリーでつけれる電気をつけて、角度調整した。また漫画を読み始める。今日は8巻までにしておこう。俺はイヤホンを両耳につけて音楽を聴きながら、腹を抱えて笑っていた。
イヤホンの奥から何か声が聞こえてくる。
「ぐおぉぉ、ぐおぉぉ、ぐおっ。」
かー君のいびきだった。イヤホンの音楽に負けない音量ってどういうことだ?それでも一定のリズムが俺の眠気を誘い、眠りについた。
朝、かー君の目覚ましで目が覚める。どうやら5時間も寝てしまっていたらしい。そりゃあ、前日は2時間睡眠だもんな。軽く欠伸をしながら、隣のピー也をゲシゲシ蹴って起こす。明らかに眠そうだ。
「おはよう、ピー也。何時間睡眠?」
「2時間。」
どうやら3時半まで起きていたようだ。