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第18話 遠征③

 今日は大会1日目。入り口前に集まっている他のチームの選手たちも、やる気に満ちた目をしている。それにつられて俺達もやる気になるとかはない。ただ、目の前の富士山が見たくて見たくて仕方ない!今はドームに隠れているが、これが見えるようになったらどれほど綺麗なのだろうと思う。


 体温チェックをして会場に入る。中は広くて、とても綺麗だった。


「天井の枠、木で出来てんだけど。」

「ほんまやん!スゲー!」


とりあえず、マットを敷いて場所を取る。軽くドライランド(ストレッチ)をしてアップに行った。


 まずは少し長めの距離を泳いで、心拍数を上げる。水の感覚が取りやすくて、いいプールだ。キックとプルの確認をしてアッププールからメインプールへ。少し人が並んでいるが、スタートの確認もしておこう。飛び込んでバタフライを泳ぐ。ちなみに俺が泳ぐのは200m個人メドレー。50mずつバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールの順番に泳ぐ種目だ。専門種目ではないが、タイムを持っていて損は無いだろう。


 アップの感じからして今日は調子が良さそうだ。このままレースに繋げれたらいいな。なんて思っているうちに、もうレースが始まりそうになる。なんせプログラムナンバー2番だからな。水着を履いて、召集所に向かった。


 この大会は全年齢混合で予選競技は行われるから、そこまで速くない俺は中学生や小学生に囲まれながら泳ぐこととなる。少し恥ずかしい気もするが、俺が遅いから仕方ないか。


―ピッピッピッピッ、ピー


笛が鳴って、スタート台に上がる。一気に景色が変わり、プールの水の音だけが聴こえるようになる。


「Take your marks.」


そう言われて、構える。


―ピッ


短い笛に合わせて飛び込む。ドルフィンキックを6回打って浮き上がって手を掻く。まずはバタフライから。まあまあ得意な種目なので、先頭集団について行く。体力は4割ほど消費したが、あとは後半に残しておこう。


 次は背泳ぎ。少し苦手な種目だが今は泳ぐしかない。できる限り体力を回復しながら泳ぐしかないか。「長いな」なんて思いながら泳いでいると、ラスト5mの旗が見えてくる。バックターンをして次の平泳ぎ。1番苦手な種目だから周りに置いていかれそうになるが、ギリギリ足が見えるところで踏みとどまれた。


 そしてラストのクロール。体力では周りをゆうに上回っている俺は、このラスト50mでごぼう抜きできると思ったが、他もなかなか早い選手ばかりだからか、あまり差が埋まらない。自分から見えている、右側のレーンの選手は抜くことが出来たが、1つ左のレーンの選手には追いつけず、この組では2位だった。タイムは2分38秒。ベスト+1秒だった。

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