目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第33話 変化

 2月16日。バレンタイン後最初の登校日。いつものように登校して、自分の机にカバンを置く。朝一に海南さんと熊野さんからクッキーを貰って、今年は多めだなって一息つく。


「ねぇ、作詞家くん。これ、作ってきたんだけど。」


久しぶりに柚さんが話しかけてきた。


「柚さんの手作り?ありがとう!」


俺が少し喜んだ表情を見せると、柚さんは少し口角を上げた。透明になっている窓から中身を見ると、マカロンだった。


「由良君よっす!」

「由良君おはよう!」


しばらくすると琴さんと船戸さんも近づいてきて、クッキーを貰った。今回の成績は7個(杏の以外)。自己記録更新だ。明日、大雪かもしれないな。


 バレンタインで浮かれているのも束の間、授業はそんなこと知らんと言わんばかりに進んでいく。


 そして変わったことがある。


 1つ目は休み時間のきいの距離が近いこと。今までは俺の机に来てただ喋るだけだったのに、今日は俺と椅子を半分こして休み時間を過ごしている。別に俺は構わないのだが、やはり周りからの視線が痛い。


 そしてこの休み時間もそうなわけだ。


「水泳部は今週末も試合だってな。大変だな。」

「いや、そうでもねぇよ。2年がいないから人数はめっちゃ少なくなるけど、敬語使わなくていいってのはいいよな。」

「奏っていつも敬語使わんやん。」

「ちょ、楓。」


俺の席の周りで集まり、喋る。


「ねぇ、楓ってちょっと前まで『奏っち』ちゃうかったっけ?」

「「あっ。」」


きいの指摘に2人は固まる。そう、2つ目は奏と海南さんの距離が近くなったこと。元々仲が良かった2人だが、この休みの期間でさらに距離が近くなった気がする。


「それは、私たち幼馴染だから、前まではみんなの呼び方に合わせてたけど、昔の頃の呼び方に戻しただけ。」


そんなに顔を赤くして言っても説得力ないからな。


「ふーん本当かな?」


ほら、きいがめちゃくちゃ気になってるし。


「本当やし!奏も何か言ってよ!」

「ん?あぁ、そうだな。」

「奏、ホンマに?」

「Qもかよ。俺たちはそういう関係やないって。」


明らかに2人とも慌ててる。見ていて楽しい。


「2人とも、そのくらいにしといてあげて。」

「楓たちが可哀想やわ。(私も気になるけど。)」


桜と熊野さんが止めに入ると、海南さんがキラキラとした目で見つめている。


「だから、後でじっくりね。」


桜の海南さんの肩を掴む手に少し力が入る。そのまま2人は自分の席に戻って行った。


「奏も後でな。」


俺は奏の肩に手を置いた。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?