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第41話 期末③

「ぞ〜なむ〜や〜か〜れ〜んた〜いけ〜♪こ〜そがきたならいぜんけい♪」

「きい、それなんの歌だ?」

「中学の先生が、係り結びの覚え方教えてくれたんだ!」

「へぇ。んで、意味は分かってるの?」

「分かってるわけないやん。ひい君は、私を何だと思ってるの?」


ひい君は少し悩む。ふふん、そんなに言葉にしにくいような事なのかな?


「アホ。控えめに言ってあんぽんたん。」

「しゃーきゅーりゃー(さーくーらー)!びぃぐんがびじべでぐる(ひい君がいじめてくる)!」

「それは私も同じかな?」

「ちぇっ。桜もか。」

「ちぇっ、って何だ?」

「桜に分かるかなぁ?」


いつも3人で帰ってるけど、私の中の悪魔はいつもこう言っている。「こんなやつ、蹴落としてしまえ」と。私の本心かもしれない。でも、私はそんなことできる娘じゃないから。


「それはそうと、きい。テストは大丈夫なんだな?」

「うん!追認は回避出来てると思う。」


この発言をしている時点でアホと言われても私は文句を言えない。これでも、結構頑張ってる。だって…


「どうかしたか?」

「ううん、何にも。」


今ここで気づいていないのはひい君だけだけど。


「じゃあ、また明日ね。」

「おう、明日な。」

「きい、頑張って!」


玄関のドアを閉めて、ふぅと息をつく。明日か…明日が実際、1番ヤバいねんもんな。言語文化はまだしも、化学基礎が…。いや、そんなこと思ってる暇はない。全力を尽くす。それ以上でもそれ以下でもない。


 まずは言語文化の内容を頭に叩き込む。敬語とか何言ってるかは分からないけど、なんとなく雰囲気で『尊敬』と『謙譲』は分かるかな?単語はもう覚えてるし、ふわぁ。眠い。時間は4時過ぎ。5時前まで仮眠取ろっかな。


 横のベッドにごろんと寝転び、スマホのアラームを合わせる。そして私は浅い眠りについた。





―ピロン


 スマホの着信音がして目が覚める。思ったより寝ていたな。時間は…6時前。6時前!?完全に寝すぎてる!通知は、ひい君か。えっと…


『鞄の中』


ん?どういうことだろうか。


 とりあえず漁ってみる。今日の教科の問題とか、教材とか、こんなの支給されてたっけ?いや、ひい君の自前だな。


「ありがとう」

『気にすんな(*´罒`*)』


 当日、1時間目の言語文化はいけた。多分平均はあるかな?あとは問題の化学基礎だけ。折角ひい君に問題集貸してもらったし、少なくとも欠点は免れないと。


 チャイムが鳴って、私は問題用紙を表に向けた。


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