「信念は固く 意志は鋭く」
「お父様!」
「ほう……」
これは――【
ですが、利き腕である右腕を失って以降は、【
「刻よりも速く 魂よりも熱く
この槍は穿つ 彼方の空までも」
お父様の右の義手に纏った膨大な魔力が、槍の形になっていきます。
やはりこれは、正真正銘【
……そういうことですか。
お父様は義手になってからも、陰でたゆまぬ鍛錬を積まれていたのですわね……!
そして遂に、義手でも【
わたくしのお父様は、自慢のお父様ですわッ!
「そして舞い戻る 勝利を携えて
――絶技【
お父様は槍の拳を目にも止まらぬ速さで突き出しながら、リュディガーに突貫しました――。
お父様――!!
「ふふ、受けて立ちます!」
リュディガーは【
「オラアアアアアアアアア!!!!」
「ぬうううううううううう!!!!」
【
どちらも世界最高峰の絶技だけあって、互いに一歩も譲りません。
こ、これは、いったいどちらが――。
「グ、ウウウゥゥ……!」
「「「――!」」」
その時でした。
【
嗚呼、やはりあの【
――このままでは!
「ガアアアアアア!?!?」
「お、お父様ああッ!!」
遂には【
クッ――!!
「この勝負、私の勝ちですね、ヴォルフガング団長」
「……いや、まだだぜリュディガー。――いつも言ってるだろ、この世で一番強いのは、
「――なっ!?」
「「「――!!!」」」
その時でした。
お父様の
そんなッ!?
お父様は、左腕ででも【
「オラアアアアアアアアア!!!!」
「が――はっ――」
「「「――!!!」」」
お父様の左腕の【
お、お父様あああああああああ!!!!
「あ……あぁ……、それでこそ……ヴォルフガング団長……です……」
リュディガーは仰向けに、力なく崩れ落ちました――。
決着、ですわね……。
「……なんで今、俺の攻撃を避けなかった、リュディガー? お前なら、避けられたはずだ」
ああ、それはわたくしも疑問に思いました。
リュディガーの超人的な身体能力なら、あの状態からでもギリギリ躱せたはずですから。
「ふ……ふふ……、なんででしょうね……。自分でも……よくわかりません……」
「……ケッ、そうかよ」
もしかしてリュディガーは、心のどこかでは悪の道に進んでしまったことを、ずっと後悔していたのでしょうか……?
それとも――。
「でも……これでやっと……久しぶりにマーヤの作ったカレーパンが……食べられます……」
マーヤ……!?
よもやその女性こそが、リュディガーの――!
「嗚呼……、迎えに来てくれたんだね……マーヤ……」
「「「……!」」」
リュディガーは虚空を見つめながら、まるで愛しい恋人に向けるような、無邪気な笑顔を浮かべました。
「はは……これは美味しそうな……カレーパン……だ……」
虚空に伸ばしたリュディガーの右手は、やがてゆっくりと下がり、それきり動かなくなったのですわ――。
「……チッ、どいつもこいつも、バカばっかりだ」
天井を見上げたお父様の頬は、僅かに震えておりました――。