翌日、文化祭の準備が始まった。
私達のクラスは縁日で教室の中で、沢山の屋台を準備した。
「景品のお菓子、足りないから誰か買ってきてー」
「俺、行ってくるよ」
「本当?河上君」
「うん、何買ってくればいいの?」
「飴とかガムとか取り敢えず、持ち帰れるくらい」
「了解」
河上君が教室を出た時、もうもう一人声が聞こえた。
「心太、どこ行くの?」
「スーパー、颯太はなにしてんの?」
「さぼり」
「じゃあ、付き合え」
「ほ~い」
何やら颯太君と河上君は仲良くしているみたいだった。
「ねえ、さくら」
「なに?」
「颯太と河上君良い感じじゃない?」
「まあ、話さない時とくらべたら良いかも」
「やっぱり、あの後スーパー銭湯行ったのがいいのかな?」
「まあ、正直びっくりはしたけどね」
「それね~、颯太もあそこまで行動力あるとは思わなかったよ」
やっぱり、あれから河上君が少しだけ笑顔が増えた気がする。これなら文化祭も楽しく過ごせそうだ。
それから準備は進んで、教室内も装飾が施されて楽しい雰囲気が漂っていた。
「じゃあ今日はこの辺で」
「皆、明日遅刻するなよ」
「はーい」
各々、教室を出ていく。
「さくら、一緒に帰ろう」
「うん」
「俺らも帰るから、一緒にいい?」
「河上君も?」
「この後やることないし」
「じゃあ、帰るか」
帰り道は舞と颯太君が色んな話をしていて、話がここまで続くと楽しいものだ。
「それでさ、今度のシルバーウイークどこ行く?」
それはいきなりの話だった。
「そうだね、さくらはどうするの?」
「私?」
「うん」
「まあ、特に行くところもないしどうしようかな?」
私よりも河上君がどうするのか気になった。
「じゃあこの四人でどっか行く?」
「舞は相変わらず、強引だな。それに心太の話聞いてないだろ」
「河上君はどうするの?」
「俺は家でまったり過ごす予定だよ」
「じゃあ、良いじゃん」
「まあ、心太がいいなら良いけど、何処行くんだ?」
電車での中は色んな人がいるが、今だけは私達四人だけの時間が流れているようで、まるで青春とはこのことを示していると思える時間だった。
「でも今から、だと有名所の場所とかはいいホテルとか取れないんじゃない?」
「確かにそうね」
「おいおい、お前ら手動で話進めるな」
「どういう事?」
「俺らは舞とかさくらちゃんみたいな、金持ちじゃないの!!なあ、心太」
「それは、バイトとかで頑張ってよ」
「今、旅行にほいほい出せる程、金持ってねえよ」
「まあ沖縄とかは修学旅行で行くし、北海道とかどう?」
「無視すんな!!」
もうここまで来ると、この二人は将来いい家庭を築く気がしてきた。
一人だけ静かにじっと、考えていた河上君がふと気になった。
「河上君はどう?」
「そうだ、心太お前からも庶民の意見を言ってやれ」
少し考えて、河上君が口を開いた。
「一応、泊まる所に金がかからないくて、ロケーションも良い場所があるけど」
「まじ?」
「河上君、詳しく」
「俺の親が持っている別荘があって、そこを管理している人が最近調子崩しているって聞いて。日本にいるなら様子を見てきてくれって言われたばっかりなんだ」
一瞬の静けさが四人の中の空気を作り、驚きで声が出ないと言う様子の颯太君の表情が面白かった。
「お前、もしかして成金になったのか?」
「成金ってね、親が所持しているから俺がどうこうしたわけじゃないよ」
「それは分かっているけど、お前そんな金持ちじゃなかったじゃん」
「それは、お前らが聞いてこなかっただけだ」
「別荘持てるほど、金持ちなら自慢するだろ?それにそんな金持ちなら、なんで俺らの部活の後に飯行ってくれなかったんだよ」
「俺は親から金貰ってなかったし、だから俺自身は金はない。それにもう時効だから言うけどサッカー部の連中とは気が合わないから、出来る限り一緒に居たくなかったんだ」
「衝撃の事実なんだけど」
「なあ、心太。それって俺も含まれるのか?」
「含まれていたら今、一緒にいない」
「心太~」
颯太君は泣きそうになりながら、河上君に抱きつく
「気持ち悪いから離れろ」
まあ、そのサッカー部の人がいないとはいえ、元々サッカー部の部長でキャプテンをしていた颯太君の目の前で言い切ってしまう河上君が凄いと思った。
「そう言えば、サッカー部の人達と話している所見てないと思ったのはそれが理由だったんだ」
「まあ、時効だからもう気にしてないけどね」
「そっか、まあなんにしろそれで決定で」
「了解、因みに場所どこなの?」
「軽井沢」
「金持ちー」
三人揃って静かに声を揃えた。