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第45話アリシア

そうして、文化祭が始まった。

クラスTシャツを着て、体育館で集まり先生の始まりの宣言とステージにいた、軽音楽部

のギター音で文化祭が始まった。

一日目である今日は、学校関係者しかいない。二日目の明日には保護者やこの学校に進学したいと思う、中学生などが来ることになる。

文化祭は二日間なので後夜祭なども明日になる。

「よし、じゃあ始める準備しよう」

文化祭委員会の生徒が一言言い、各々準備を始まる。

「おーい、河上君」

担任の先生が、廊下から顔を出していた。


「心太?」

そこに現れたのは白い肌、金色がかったプラチナブロンドの髪の美女だった。

「え?誰、あの美人!!」

舞がそう声を出した瞬間、クラスの皆の視線がその美女に釘付けになった。

「お前!!」

「まあまあ、久しぶりに会ったのにそんな怖い言い方しないで。ダーリン」

「何がダーリンだ」

「良いじゃない、それに前よりハンサムになったみたいだね」

「ややこしいこと言ってないで、こっちにこい」

河上君はそう言って美女の手をとり廊下に出て行ってしまった。

私は誰なのだろうかと思っていたが、教室中の生徒はそれどころじゃないと言った感じで担任の先生に聞きに行く生徒がいたり、後をつける生徒まで現れた。

「先生あの人誰?」

「いや、俺は知らない」

「なんだよ」

「そう言われてもな」

私はなんでこんなに騒いでいるのか分からなかった。ただ少し心がズキンとした。

「ねぇ、河上君と居た人さくらは知らないの?!」

「私?!」

「そうだよ、だって河上君と一番仲いいじゃん」

「安藤さん知っているの?」

残っていた男子生徒が寄ってきた。

「いや、知らないよ」

「なんだ、知らないのか」

なんで私が知っている前提なのか、さっぱりだった。

「一番、仲良くはないと思うけど」

「それ本当に言っている?」

「なんで?」

「だって毎朝一緒に登校しているし」

「それだけ?」

「それだけって、なんならさくらと河上君って付き合っていると思っている人多いよ」

「付き合っているって、そんな仲じゃないんだけどな~」

「本当に~?」

「本当だって」

「じゃああの美人見た時、どう思った?」

「どうって、誰かなってだけ」

「それだけ?」

「うん」

少し心の中がざわついたのは、言わない方がいいと思った。

気づけば、教室の中に男子は居なくなった。

「なんでこんなに、騒ぎになっているの?」

「そりゃ、ミステリアスで頭も良いし運動もできる、それに何と言っても顔が良い。そんな人にあんな美女が尋ねに来るってなったら大事」

「そんなに?」

「そうだよ、さくらは河上君のことかっこいいって思ったことないの?」

見つめ返すと、助けてくれた時とか、私のことちゃんと考えてくれたり本気で誰かを助けようとする姿はかっこいいとは思うけどでも、確か遥さんはかっこいいって言っていたのはブラコンだと思っていたけど実はそうでもなかったのかもしれないと思いだした。

「まあ、顔ってよりは性格だったり行動する所がかっこいいって思うけど」

「へ~」

何やら舞がニヤニヤしているので舞のことを小突いた。

「でも、気持ち伝えるなら早めにしたほうが良いかも」

「え?」

「好きだよって」

「まだ好きってわけではないから、そういうことは軽々言わないで」

「まだって事は?」

また、ニヤニヤしだした。

「いや、そんな気はないからね!!」

「はいはい、そういうことにしといてあげる。でも気づいた時に遅いってこともあるからね」

「だーかーらー」

「分かっているって、でも確実に河上君は人気だから」

「はいはい」

取り敢えず、会話は終わったが少しヤキモキしていたのは事実、もしかしたら。いや、そんなことはない。

そう言い聞かせた。

ふと女子しかいない周りに聞き耳を立てると。

「やっぱり彼女かな?」

「もっと早く行っとけばよかったかな?」

そんな会話をしている生徒もいた。やはり人気らしい。


一方、河上は。

「おい、誰だよその人河上君!!」

「そうだよ、そんな美人捕まえるとは隅に置けないな」

「お前らうるさい」

「そう言うってことは、もうキスとかしたのか?!」

「は~、お前は初心だな」

「何を!!」

「はいはい、そこまで」

そう制したのは尋ね人だった。原因はこいつなのに。

「あの?」

「なに?」

「あの、河上とはどう言う関係なんですか?」

「ふふ、そうね。私たち? とても情熱的な、熱い一夜を共にした仲よ」

「え?それって」

「お前はまた、余計なことを」

「そう言うって事は河上お前!!」

「お前らが想像している関係性ではない。お前も誤解の生む回答はやめろ」

「はーい!!そこまで!!」

もう、収拾がつかないと思った瞬間助け舟を出してくれたのは颯太だった。

「なんだよ、颯太。急に来て」

「心太が困っているだろ」

「俺達は河上と、この美女の関係が気になるだけだ」

「まだ、人が来ない時間にわざわざいるって事は、何か大切なことを話に来たんだろ。だから気になるなら後にした方が良いだろ?」

「まあそれはそうだけど」

「あら?心太の友達にこんな勇敢で頼れるナイトがいるなんてね。私の事も守ってくれる?」

「え?俺にはその……」

「あら、私とは一夜の遊びでもいいのよ」

颯太の頬に口付けをした。

「颯太―。お前!!」

颯太の頬に男子が口をつけようとする者がいたりと、もう収拾がつかない様子だった。

颯太には感謝しているが、今の颯太は鼻の下が伸びていてきもい。

「颯太、お前そんな顔見られたら」

「見られたらって誰に?」

「いや、後ろ」

「え?」

颯太の後ろには般若顔で怒り心頭な、高倉さんがいた。

「颯太、ちょっとこっち」

「え?いやこれは」

「言い訳しないで!!」

颯太、ご愁傷様です。


颯太が居なくなったことでまた、質問攻めにあったがそれを担任の先生が止めてくれた。

「お前らそろそろ教室に戻れ!!」

「え~でもさ、先生」

「いいから!!」

「まあ残念、また機会があればお話しましょうね」

「は~い」

「せめてお名前だけでも~」

そう言いながら、皆は怒り心頭な彼女や担任の先生に連れられて行った。


「まったくお前はいつも、厄介ごとを持ち込むな。アリシア」

「いいじゃない、いつだって、若い男の子のエネルギーを受けるのは美人な証拠よ」

アリシアというのは以前、サマエルの幹部にいた女性だ。

その美貌を使い情報収集などを得意として、サマエルの下で働いていたが過去に俺がサマエルを抜けるのを助けたことがあった。

「ビッチ」

「どうとでも言うと言いわ」

「で、あれはどういうつもりだ?」

「あれって?」

「熱い一夜ってなんだよ」

「それ?」

「そうだよ、そのせいで皆は勘違いしただろうが」

「実際そうじゃない」

「どこがだよ」

「だって、弾丸をかいくぐって一緒に行動した時よ」

「それのどこが熱いんだよ」

「あら、実際熱いし、痛かったじゃない」

「そうだけど、それより何しに来たんだよ」

「ああ、これを心太に渡しに来たのよ」

渡されたのはUSBだった。

「中はなんだ?」

「警察やインターポールがまだ掴んでいない、新たに日本に入り込んで新しくサマエルの幹部になったリストと現在のサマエルのトップの顔写真」

「写真が手に入ったのか?」

「ええ、そう様子だと新たにトップがいるって驚かないのね」

「当たり前だ、神鹿狼奈が居なくなっても、サマエルやマラクが暴走しないのはそいつがいるからだろう」

「そうね、新しいトップは相当信頼と絶対の地位を確立できる程の力や頭脳がある。それも情報によれば、心太でも手を焼く程に」

「もう、こっちは奥の手を使ってでも神鹿狼奈をどうにかしたのに。まだそんな奴がいるのか」

「いや、私も知らない奴らしいわ」

「アリシアでも分からないのか?」

「ええ、組織の中でも顔を知ってる人は殆どいないのと名前も側近しか知らないらしいわ」

「コードネームでも使っているのか?」

「さあ?私が持っているのはこの写真だけ」

「写真?」

「まあ、画像は荒いけど先に見せるわ」

アリシアはスマホで写真を見せてきたが、画像が荒すぎて誰だか分からなかった。でも確かなのは過去に見たことがあると言うことだった。

「分かる?」

「以前に見たことがある」

「何処で?」

「警察署で空港の防犯カメラを見た時に」

「誰なの?」

「顔は分からないが、名前はマモンと言うらしい」

「防犯カメラでも分からないの?」

「ああ、以前見た時は変装だろうしな」

目を使いもう一度確認しても以前見たマモンと同じ色をしていた。

「目を使って見たから、間違いない」

「そう、マモンって言うのね」

「ああ」

「私も少し調べてみる」

「よろしく」

「ちゃんとUSBの中見てよ」

「分かっている」

「これ、手に入れるのに大分苦労したんだから」

「分かっているよ、サンキュー」


「河上君?」

「ん?」

後ろを見ると、安藤がいた。

「どうした?」

「もう、始まるから呼んできてって」

「ああ、分かった」

「あら可愛い女の子。貴方が今のルインのローズかしら?」

「ルイン?ローズってどういう事ですか?」

「混乱するから余計なこと言うな」

「はいはい、じゃあね。ルイン」

「ああ」

そう言ってアリシアは歩いて行った。


「じゃあ教室行くか」

「うん、ねえ河上君?」

「なんだ?」

「さっきのルインとかローズってなに?」

「ローズについては知らんが、ルインって言いうのは、以前からアリシアが俺のことをそう呼んでいるんだ」

「どういう意味なの?」

「詳しくは知らんが俺はサマエルにとって、神を装う悪に、神罰を下す者らしい」

「なにそれ?」

「さあな」


学校を出た、アリシアは独り言を言っていた。

「ルイン、今度こそは守ってあげなよ。貴方のローズ。血に染まる世界の中で、唯一、穢れていない花を」


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