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第12話

 ピカン・シティの夜は眠れる地域と、そうでない場所の差が激しい。

 アルテミスのアジトがある場末の地区は静かなものだが、繁華街はネオンが煌々としており、夜の店がにぎわっている。


「ヤツのうちは街中だな。別に夜だからといって、静かなわけでもない」


 足早に直前の下調べとして現地へ向かいながら、ラウルが呟いた。


「まあ、今回はたいした仕事じゃねえだろ。ただ、目的のブツの数がなのかハッキリ分からないのが難点だけど……」

「それが分からないから困ってるんだ」

「まあ、サンタさんもびっくりな巨大袋を持ってんだし、大丈夫だろ」


 折りたたまれた袋の入ったリュックをポンポンと叩き、ジオットが言った。


「運び出すとき、目立って仕方ないがな……」

「ボスには目立ってナンボって考えもあるらしいけど、まあ、オレがついてりゃなんとかなる」

「……以前のような失敗作を持ち込んでいなければな。ところで……」


 ラウルが話題を変えるよう、咳払いをした。


「ん?」

「さっき、妙な事を言っていたが、あれはどういう意味だ?」

「妙な事?」

「だから、お嬢様とどうとか……何故そんな発想になったのかをだな――誤解が生まれるような発言は慎めと」


 ジオットが余計なことを言った所為で、ローザに絡まれることになった。

 時計塔への一件を知らないなら、いったいどこを切り取ってそう思ったというのか――


「ああ。おまえさあ、一昨日だったか、例の苦手なモノを食わされたことあったろ? その日の夜に――」

「―――」


 ラウルの表情が驚愕のそれで固まった。


「どっ……?」


――どうしてそれを……?


「おまえのことなんか丸ごとズバッとお見通しなんだよ」


 不敵な笑みを浮かべるジオットを不気味に感じながら、ラウルは『あのとき』のことを思い出していた。


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