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第61話

『10点、10点、10点、10点、10点、9点、10点、10点、10点、10点! 合計は――』


 シャーンという、シンバルの軽やかな音が鳴り響く。


『99点~~~!』


 わあ、と会場が沸いた。


『最高得点、本大会優勝者となりますが……タン先生、今回も満点は与えられず……なのですか?』


「そうね。お衣装に関してもよく勉強しているし、最高得点を獲得するにふさわしいとは思ったわ。だけど、一点……」

「一点……?」

「派手さにこだわるあまり、風情に欠けるところがあったというのかしら? そのあたりは、先ほどの彼――ウイキョウと言ったかしら? 彼のほうが優雅であり、カク家を代表する執事として、誇りに満ちていた。そうね……うまく言えないのだけど、あなたには確固たる自信のようなものが備わっていないように思えたわ。まだ、ルオ家に仕えて日が浅いのではなくて?」


「え、ええ……」


 そこを見透かされたことにどきりとし、ラウルは頷いた。


「そう。執事としては未熟なのでしょうね? でも、懸命に主人に尽くすその姿勢は素晴らしいわ。あなた、きっといい執事になるわよ」

「―――」


 マダム・タンに微笑みかけられ、どう応えたものかとラウルは困惑していた。


――いい執事になることが俺の目標なのではないが……。


『それでは表彰式を行います。優勝されたルオ家のラウル氏はそのまま、次点、わずか二点差で敗れたカク家の執事、ウイキョウ氏……そして点差は開いてしまいましたが、三位は28点を獲得しましたイ家のセバスチャン氏! どうぞ、ステージ上へ』


 表彰される三人の執事たちが、それぞれ賞状と盾を受け取る。


――ただの軽い茶会だと思ったのに、あそこまで本格的にやるとはね……。


 ナディアが半ば呆れたように呟いた。


――それにしても驚きました。ラウルさんを見直しましたわ。

――そのためにひと月も休んだんだもの、当然だわ。


 微かに頬を紅潮させ、ナディアが視線を反らした。


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