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第26話:察知

 森に差し掛かっていた。


 森というよりは、ジャングル一歩手前といったほうがよかった。


 私はそういう森そのものは慣れ親しんだものなのであまり苦にはならなかったが、『セリア』が若干遅れ気味だったので歩を緩めてなるべく凹凸の少ない地面を選んで歩いて行くことにした。


 まさかその森の中で、戦が勃発しようなどとは深くは考えてなかったのである。


 レーダーパーセプションに動くモノが、十程映った。


 先に気が付いたので、歩を止め「前方に十くらいの数で何かが動いてます。敵勢力の可能性があります」と私はいった。


「十か多いな、何かは分かるか?」と『ゲルハート』がいう。


「ここからでは、のぼりになるのと丘の向こう側なので見えませんね。『セリア』さん何か見えますか?」と私は答えつつ聞いた。


ふくろうでは無理ね、森の葉が多いから隠れてしまって見えないわ」という答えが返ってきた。


「接触しないことを祈りますか、でもさっき何もない所にいきなり十沸いたのでひょっとしたら転移かもしれませんし、すでに捕捉ほそくされているかもしれません」ということにした。


 気にならないといえばうそになる、なのでそういった答えになるのだ。


「捕捉されているかもしれないか、厄介やっかいだな」と『ゲルハート』がいった。


 事実ソイツらは真っ直ぐに、こちらに向かってきているのである。


「こちらに真っ直ぐに向かってきているようですね、やはりバレているのではないでしょうか」と追加でそういった。


 但し、接敵までまだ二キロはあるのだ。


 この段階で察知されているということは……、大型の固定型魔導器でもあるのか? と思わせるものなのであった。


「魔導器でもありそうな状況ね。こっちに真っ直ぐ、向かってきているのでしょう?」と『セリア』が私の思いを察したような答えを出した。


「魔導器ってなんだ?」と『ゲルハート』と『ウィーゼル』がハモった。


「まあ最新式だしまだ認知度は低いか……。それはね、魔術師の代わりをする機械のことよ。もっとも単一能力に特化した、というほうがいいでしょうね。術一つに一器でしょうし、まだ複合型なんて聞いたことは無いから……」と『セリア』が答えた。


「それか術に特化した魔術師でもいるのかしら?」と追加で疑問形でつぶやいた。


「機械か、厄介なものなんだな」と『ウィーゼル』がいった。


「でも操作するのは魔術師なのだけどね? 維持はしなくていいから楽だそうよ?」と『セリア』がみょうくわしかった。


「一.五キロに近づきます」と私が相手が速めだ、ということをあんまえたいい方で警戒態勢を形作った。


 対象グループを、赤い点として透過地図に表示させるように術式を組みなおし行使した。


 円形透過地図のギリギリ表示されるところに、赤い点が一つ表示された。


 〇.五キロまで寄られると、接敵されているのと変わらないのだ。


 下手すると、こちらの位置がピンポイントで分かっていると地点法撃がやってくる距離なのだ。


 〇.一キロだと、もう視界にとらえられるはずである。


 魔法が飛んできても、弓が飛んできてもおかしくない距離なのだ。


 銃法というモノもあると聞く、どういうものかは概要しか知らないが。


 だがこちらにも対処法がないわけではないのである。


 殲滅せんめつ型魔導を、行使すればいいのだ。


 味方が前に居ない状況ならはらう様に殲滅型魔導を撃つことで、広範囲を殲滅できるものがいくつかあるのだ。


 ただ、相手が敵だと完全に判明している場合のみ有効な方法なのである。


 未確認の相手の場合は、間違いましたでは済まされないものがあるのだ。


 暗黒界だから、といって人がいないわけでもないわけなので。


 必ず悪魔であるということは無いのである。


 だからといって、敵ではあると思われる状況なのである。


 でも敵ではない可能性もあるのではあるが、今回については敵であると判断してもよさそうであった。


 たとえ人であっても包囲するように、間隔を詰めて動いてくるものが味方だとは間違っても思わないだろう。


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