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第2話:乗用馬

◆ 視点は切り替わる。『ゲルハート』視点


 俺は『アルカナ』を連れて、王都イチ品揃えの良いという謳い文句の市場へ来ていた。


 知り合いの馬商人に会うためである。


 モンド商会のフレイ一号店のフロントから外線をかけさせてもらって、コンタクトは取った後だった。


 この世界、商人は時計と電話を手中に収めているらしい。


 でないと、商売が追い付かんらしい。


「『ゲルハート』! ひさしいな! 元気でやってたか? そっちの姉ちゃんは彼女か?」と馬商人『ジェィド』がいってくる。


「客になんてこと言いやがる、てめえ! 旅の仲間だよ! 彼女に合う馬を一頭と、かしこい馬一頭の合計二頭を頼みたい!」と俺はいった。


「よっし、コッチに来な! 顔合わせと行こう、馬は社会性が強いがナイーブな生き物だからな。稀にそうでないやつもいるが」といいながら奥のうまやに案内してくれる。


 俺は『アルカナ』を連れて一緒に奥の厩までいった。


「お前用の馬はあるんだよな!」と『ジェィド』がいう。


「俺用の馬はあるから、問題はねえ!」と俺が答えた。


「フレイ種の馬が今は五頭、ヴェゼル種の馬が二頭いる。俺ならヴェゼル種を押すがね。まあ性格は、お互い会って見ないと分からねえからな」といって先にヴェゼル種の厩に案内してくれたようだった。


「この鹿毛かげの子が気立てがいいんだ、ちいっと人見知りするけどな。人見知りする性格が災いして買い手がなかなかつかないんだ。可哀そうな子なんだ」といって案内してくれた。


「いい馬だな、中々体躯もしっかりしている」と俺がめた。


「『アルカナ』まずはご対面だ、匂いはそのうち慣れる」と俺がいった。


 『アルカナ』がこっちまで来て、まず馬と向き合った。


 お互いによく見ている、そういう状況だった。


 相性は、ぱっと見そんなに悪くは無さそうだった。


 お互いに近づいて行って、さらにじーっと見つめ合っていた。


 馬のほうも余り毛嫌いするような節も見えず、自然に一緒になりそうだった。


 『アルカナ』がそろーっと手を伸ばし、馬の顔に触れた鹿毛の馬は自然と受け入れた。


 むしろ、そっと寄り添うようにしてさらに近づいた。


 『ジェィド』がヒソヒソ話を持ち掛けて来た『いい感じじゃねえか、あそこまで自然体で行ってあれだけ受け入れるとは、いい度胸だ気に入った。売ろう』といって来た『いいのか、まだ瞳は受け入れていないようにも見えるが』と俺が返すと。


『あれだけなつくヤツってのは今までいなかったんだ。決定と見ていい。商人の勘だよ。信じて貰ってもいいぜ』と『ジェィド』がいった。


『で、いくらだ。十五か二十か?』と俺が聞くと、『あの子は売れ残りなんで十二だ、可哀そうだが仕方ない』と『ジェィド』がいった。


 十金貨ゴルトと一金貨を二枚渡した。


『馬具も付けておこう、サービスだ。でこっちの妙におとなしい達観した感じのヤツが賢い馬ってやつだ』と『ジェィド』が反対側の檻を指さした。


 どれどれと思ってそっちを見た。


 確かに達観してはいるが、と思い餌をやるつもりで手を伸ばした。


 すると分かっているのか、しっかりと寄って来てこちらをじーっと見つめるのであった。


『慣れているな? かなり、いい感じだが今まで売れなかったのはなんでだ?』と聞くことになった。


『お前からは馬の匂いがするんだよ多分、だから寄って来たんだと思う。他の客は匂いが違うらしくって、近寄らなかったんだよ全然な。おかげでヴェゼル種の馬ってことで期待していたんだが、全然売れず残っちまってたんだこいつも十二なんだが買って行ってくれないか? 昔のよしみで頼む、馬具も付けよう』と『ジェィド』が頭を下げる。


『俺はこいつが気に入ったから金を出すだけだ、こいつなら『ティナ』には合いそうだな』と俺はいうと財布から先ほどと同じ十二金貨を支払った。


『この子は青鹿毛あおかげにあたるんだ。額のところが、縦に白くなってるだろう』と『ジェィド』がいってくれたので種類を間違わないで済みそうだった。


 その後手続きを済ませ、無事馬が持てるようになった。

 二人して馬に馬具を付け『アルカナ』が馬を引いて、俺も一緒に馬を引いて宿屋に戻ったのであった。

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