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第4話:置手紙

 二日目のことだった、基本泊っている部屋の格式が違うので打ち合わせはもっぱら朝食後の歓談室で行われていた。


 『アルカナ』が「どこかに良い武器屋はありませんか? 手持ちの弓が壊れてしまったので強弓が欲しいんです」といったのである。


 それに「中央通りのすぐ南にある、ヴォーテックスの武器屋がいい弓を揃えているぜ」と『ゲルハート』が答えた。


「詳しいのね、『ゲルハート』」と『セリア』がいった。


「武器屋とか冒険者向けの商店にはそれなりに知り合いがいてな、皆昔得た知識で仕事をしているのさ。だから詳しいやつが、やる店のほうがいいだろう?」と『ゲルハート』はいったのであった。


「そう言えば、『ティナ』は武器は大丈夫なの?」と『セリア』が聞いた。


「私は基本的に武器は変えてないですね、ジラート連合王国にいる時に買った品質のいいレイピアでこと足りるので。予備に投げナイフも持ってますけど、牽制用ですから素材にはあまりこだわりがありません」と『ティナ』は答えたのであった。


 その後、部屋に戻ってから『セリア』が「『ウィオラ』ちゃん、この前話しに出てきた書置きって見せて貰ってもいい?」といって来たので、見せることにした。


 荷物の中ほどに、二重に袋に入れてクッション性を出してしまってある大事なものである。


 袋からそっと取り出すと、その緑色の置手紙を見せたのであった。


「これが置手紙なの? 確かに“わしゃ南に行く。来たければフレイニアまで来るがよい”って焼き付けてあるけど。エメラルドでは無いわよね、そもそもここまで色濃くないか。しかも焼き付けたところが白く浮き出るなんて、かなり高位の魔法でもないとここまではできないと思うわ。流石さすがウォン・ウィリアム、でも何なのかしら材質がよく分からないわ?」といったのである。


「少し見せてくれんか?」と『ウィーゼル』がいった。


「いいですよ」と私が答えた。


「ふむ、軽いな少なくとも石ではなさそうだ。皮かな軽さ的には、だが存在感が半端ないな」と『ウィーゼル』がいって私に返してくれた。


「俺も見ていいか?」と『ゲルハート』はいった。


「どうぞ」と私はいいながら渡す。


「確かに軽いが、硬い感じがある。皮じゃなくて、鱗か甲羅に該当しないか?」と『ゲルハート』はいいながら返してくれた。


「鱗だとしたら、かなりの大物よ。年輪見えないし、重ねも見えない。甲羅というほうが、まだ分かりやすいけど。陸亀の大きいのが、フレイニアには住んでたでしょう」と『セリア』がいう。


「だが甲羅には透け感なんてないぜ、それは半透明に近い材質だ。ガラスというには、違うような気がする。華奢きゃしゃさなんて感じないからな」と『ゲルハート』はいった。


「んーなんとなくだが、鱗じゃないかって気はするな。海竜の鱗とかじゃないのか?」と『ウィーゼル』がいった。


「なんとなく竜っぽいけど竜だとしたら、どうやって成形したの? ソレ厚さが均一で、りすらないのよ。しかも厚みは一センチでぴったりで、寸分狂わずのはずよ」と『セリア』がいう。


「まあ今回はそれのおかげで、帰って来れたようなもんだから文句は出ないじゃろ」と『ウィーゼル』はいった。


「そうね、材質はともかく。『ウィオラ』ちゃんがそれを持っていたから、座標の固定が出来たんですものね。すごいものだわ」と『セリア』がいった。


「お見せできましたから、しまい込みますね。大切なものですし」と私がいう。


「大切なものを、ありがとうね」と『セリア』がいった。


 ふと私は思い出した、朝の件ではないが『ウィーゼル』が鎧を探していたらしいということを。


「そう言えば、『ウィーゼル』は鎧を探しに行かなくてよかったのですか?」と聞いてみる。


「それな、皮でいいかと思うようになって甲羅はあきらめたんじゃ」という『ウィーゼル』がいたのであった。


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