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第9話:無謀な者

 私たちは皆が息巻いて討伐情報を見ているのを無視して、城塞都市サグレスで一番大きいといわれる宿に来ていた。


 当然私がいの一番に宿に入り、宿のマスターに昨日と同じことを告げた。


 すると「あんたたちは討伐が目的ではないのか?」といわれたので「私たちは討伐が目的ではありません、まずは宿に泊まるのが目的です」と答え昨日と同じような流れになった。


 厩に馬と馬車を預け、荷物を持ち今日はロイヤルスイートに入ることにした。


 セキュリティー面が最高位であるため、数段違うのである。


 今日は仕方がなかった、荒くれ者が多く宿に泊まるからでもあった。


 そのための対策であったのである。


 多くはビッグ・ルームやローにとまると思われたが、一部はハイまでは入ってくることが予想されたためエンシェントより上のロイヤルスイートにしたのであった。


 男性二人にはあまり関係が無いが、女性陣はそうはいってられないものであったからである。


 女性を狙う、盗賊まがいの荒くれ冒険者もいると聞く。


 そういう意味での対策は、行わなければならないのである。


 ひねつぶすのは簡単だが、後々尾を引くなんてことはないように願いたいからではある。


 世の中にはそういうやからもいるのだ。




 ロイヤルスイートにしたのはもう一つ、食事の格と部屋の違いであった。


 五十ゴルトで安全が買えるなら、安いものである。




 そのおかげか無頼の輩が現れることはなく、無事一泊を泊まることができていた。


 次の日も準備も問題なく、車速を少しゆっくり目で宿を出たのであった。


 無頼の輩や討伐組の冒険者たちはもうかなり早朝に、街道目掛けて出発したそうである。


 私たちが、城塞都市サグレスを出たのはお昼少し手前であった。


 であるからして、彼らの先発組と会うには確実に半日と少しはかかることになるわけではある。


 それに、必ずしも無頼の輩になるわけでもないのだが、えて無頼の輩とさせてもらったのでもある。


 そして食事を途中で済ませ、ゆっくりと移動し半日が過ぎるころ遠くに竜が数匹飛んでいるのを発見するのである。


 数はおよそ五匹、種別は黒い外見から暗黒竜と想定された。


「どうします? アレ……。逃がしては貰えなさそうですが?」と私はいった。


「そうじゃな、あの数から逃げるのは難しそうじゃな」と『ウィーゼル』も同意した。


「騎士付きだろうから、逃げるのは無理だろうな」と『ゲルハート』も同意見だった。


 遠視ティルファーと唱え状況を静観した。


 遠視で見ても傷を負っている奴はいない、毛ほどの先もダメージを受けていないようにしか見えない。


「高位ランクでしょうか? 傷ついているものが一匹もいません」と私は状況を見ながらいった。


 冒険者たちは弓や弩を使ってはいるものの、手傷すら負わせていない。



◆ 俺視点『ウィーゼル』視点


「無視するわけにもいくまい、俺と『ティナ』で馬車は何とかしよう。他の皆は一旦前の連中を助けに行ってくれ」と俺はいった。


「俺は回復に回るから手いっぱいになるハズだし、『ティナ』は届かんじゃろ? あれらには……」と俺はいってみた。


「確かに空中を飛び回られると届きませんね、魔法も持ちませんし飛び道具もないしそもそも効くかどうかすら分からない」と『ティナ』は残念そうにいった。


「各自の馬は馬車の後ろに結わえて行ってくれ、『ティナ』馬の見張りを頼む。俺は、馬車の制御をする」と俺はいった。



◆ 私視点『ウィオラ』視点


「では馬は任せましたよ、『ウィーゼル』、『ティナ』」というといの一番で私が動いた。


 『ゲルハート』、『セリア』、『アルカナ』がそれに続く。


 ハヤテをかけると軽く走って、前方の冒険者にエンゲージした。


 すると無謀にも十五メートル向こうから「こいつは俺たちの得物だ! 横取りは良くねえぜ!」といってくるではないか。


「明らかに手傷を負わせてないどころか、追い詰められてるじゃない?」と聞くことにした。


 三人も追いついてきたが、「手は出すなよ、俺たちの得物なんだから!」とまだいうではないか。


「お前らジリ貧になっているって気が付かないほど間抜けか?」と『ゲルハート』が突っ込んだ。


「相手に手傷も付けられなくって何が俺たちのだ、一回死んで来い。帰るぞ皆、奴ら死にたいらしいからな。勝手に自滅してもらおう、こっちに迷惑が掛からないようにしてほしいがな」というと『ゲルハート』は馬車のほうに戻って行く。


「気が変わっても助けませんからね。ちゃんと最後の一人になるまで対処なさい」と私もくるりと背を向け馬車に戻って行った。


 『セリア』も同様の処置をとったため、『アルカナ』も戻るしかなかった。


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