『頼ってほしい』そんなことを言われても、私は頼ってるし、相談だって乗って貰ってるつもりだったんだけど……。
ノエルは、私になにを不満に思ってるのだろう。
どうしてそんなに悲しそうにするの?
「私は頼ってるわ」
〈違う。……そうじゃなくて、姉上が大変な時に僕はなにも出来なかった。なんのために留学してるのかわからない。だから、姉上。僕はあなたを守りたい 〉
「まも……る?」
〈はい。僕にとって姉上は大切な人ですから 〉
『大切な人』と言われ、戸惑った。
姉らしいことは何一つしてこなかったし、留学したのだって騎士になるのが夢だったんじゃないの。
だって騎士の家系の元に行くのだってそれぐらいしか思いつかなかった。
姉として大切なのだろうけど、
「ありがとう」
微笑むと、ノエルもつられて微笑んだ。
ノエルの将来が不安になってきた。
シスコンにならないことを願おう。
「私、頼りにしてるんだよ。ノエルのこと。今は近くに居ないからそう感じてしまうだけだよ」
〈 それはそうですが……姉上の心が心配なんですよ。トラウマになってるのではありませんか?〉
「誰かに聞いたの?」
〈いえ、聞いてませんが、姉上を見ればわかりますので〉
や、やっぱりノア先生の言う通り、私は顔に出すのかもしれない。
ノエルに心配かけさせるなんて姉としてやってはいけないことね。
〈……姉上、心配かけさせて姉として最低とか思ってませんか?〉
「え!?」
なんでわかったの!!?
エスパーですか!!?
そんなにわかりやすいのかな。
〈そこは姉上の良いところでもありますが、一人で抱え込まないでくださいね。いつでも話を聞きますからね。というよりも僕に話してください〉
「……ノエル」
なんて良い子なの!?
感動して涙が出てきちゃった。
ノエルは〈泣くほど辛かったんですね〉と、心配そうな表情で言う。
これは違うの。
あなたが良い子すぎて、涙が出ちゃったの。
辛かったのは辛かったけど、今の涙は違うんだ。
でも、せっかくのノエルの好意。
大丈夫だとか、軽はずみな言葉をかけて傷付けたくない。
なので私は、甘えることにした。
誰かに相談するのは正直苦手で、出来るなら相談しないで一人で解決したかった。
一人で悩んで、行動した結果が殿下に対してのあの言動だったんだけど。
頼ることに慣れてない私にとって難易度が高かった。
それに気付かなかったのは、『出来る』と思い込んでいたから。
私はゆっくりと口を開いた。
これから少しずつ、相談してみよう。
相談しないで、一人で抱え込んで大変なことになるんだから。
みんなにも迷惑かけちゃってるし、もう、迷惑かけたくないと思っても結局は迷惑かけてしまうだろう。
でも少しずつ、変わっていかないと。
その場に立ち尽くしても何も始まらない。
少しでも前に、一歩ずつ確実に踏んで行こうと思う。
本当に、ありがとうね。……ノエル。