シーアさんの話によると、魔術士の子供は魔力が高いので体が魔力に耐えられず、死んでしまうケースが多い。
そのため生きていることが奇跡に近いため、貴重な存在というのは“表向き”なんだそうだ。
本当の理由は、魔法石は非常に珍しいのでなかなか見つけることが出来ない。
そこで人工的に魔法石を作る方法を考え、魔術士の子供を利用するという結論に至った。
貴族に高額で魔法石を売る。そのため魔術士の子供が狙われやすい。
それはあまりにも理不尽で、皇帝は黙ってなかったのだろう。
養子に迎えるという法則を作った。
「なんだか信じられない話」
「それを促す出来事があったであろう?」
「そんな出来事……」
そんなことあったかな?
記憶を遡ると、あることを思い出した。
「カースさんの屋敷?」
シーアさんはゆっくりと頷く。
あの時、巨大な魔法陣の上に魔術士の子供を集めて何しようとしてた?
理由を聞いてもカースさんは教えてくれなかった。どうせ死んでしまう人間には教えても無駄……みたいなことを言っていたような。
「……カースさんは魔法石を作ろうとしてたのですか!? でもあの時、深紅の魔術士を人工的に作ろうとしてるって」
「まぁ、そのカースとやらは魔法石を作り、実験台にさせる人物に魔法石を使い、強引に魔力を強化しようとしたんだろう」
「実験……、マテオ様を実験台に?」
シーアさんはカースさんを知らないはずだ。それなのに知っているのは私の持っている魔法石を通して一部始終を見ていたらしい。
「そうじゃろうな」
そう、巨大な魔法陣の中に唯一入っていなかったのはカースさんとマテオ様だけだった。
それなら、私がなにもしなかったらと思うとゾッとした。
私だけじゃなく、色んな人が被害にあってたってことになる。
マテオ様はカースさんに『騙したのですか!?』と動揺を見せていた。
あの時のことをマテオ様に聞いてもなにも話さなかったけど、カースさんは『ソフィア様を連れてくれば他の子は助けてやる』みたいなお決まりなパターンだったんじゃ……。
冷静になれば予想はついたはずだ。あの時のマテオ様は今日生きられるかどうかもわからない状況。
さらに同じ境遇の子供たちを目の前にすれば助けたいと思ってしまう。
そんな状況で冷静になれる人は数々の苦難を乗り越えた人ぐらいだと私は考えている。
……そういえば、無属性をまともに使えるキッカケになったのがあの時なのよね。
まともに使えるっていっても、ほんの一瞬なんだけど……。