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第12話 遊び

 あのあと、唯奈の幼馴染がどうなったのかというと、さすがに捕まることはなかったらしい。警察とメイから彼の親に報告することになり、それで示談になったとか。それでメイはそこそこの示談金を貰うことができたらしい。

示談金は親が立て替えたそうだが、唯奈の幼馴染の男がバイトして親に返すことになったようだ。


 メイのような美少女を殴ったことにたいして、奴は親にめちゃめちゃ怒られたとか。まあ、あいつは本当はメイを殴るつもりはなかっただろうけど。メイが間に入ってくれなかったら、殴られていたのは俺だったはずだ。


 逮捕はオーバーだと感じたが、それはメイが怪我をしなかったからだ。メイがあまりにも平然としていたから、大げさだと感じてしまっていた。だが、よく考えれば婦女子を殴って何の罪にもならないなど、あってはならないことだ。奴は示談で済んで良かったと、感謝するべきだろう。


 こうして、突然知らない男に殴られそうになった話は終わった。




 就職の為、今日も面接に行ってきた。結果は散々だった。今日の面接は、いわゆる圧迫面接であった。高圧的な態度で、ねちねちと自分の欠点を指摘され続けた。自分の欠点や短所など、他人に言われなくてもわかっている。


 いい年なのに資格もない、経験もない、無職期間がある。これはもうどうしようもない。いくら人手不足でも、俺を雇おうという会社はなかなかないのだろう。少々へこんだまま、家に帰る。


「ただいま」

「おかえりなさい」


 家に帰ると、玄関で待っていてくれたメイが笑顔で迎え入れてくれた。そして、俺を抱きしめて一言。


「大丈夫? おっぱい揉む?」

「……え?」

「ご主人様がすごく落ち込んでいらっしゃるようでしたので。男性が落ち込んでいるときは、こういうのが一番よいと聞いています」

「誰から?」

「ネットで」


 ネットかよ。




「ご主人様、もう働くのは諦められたらいかがですか? そんなに落ち込むくらいなら、仕事などしなくてもいいではありませんか。お金なら私がだしますから」


 しばらく胸を揉み、落ち着いた俺にメイが言った。


「いや、働く」


 俺は断固たる意志で答えた。


 ヒモになるには、ある種の才能が必要だと分かった。


 何もせずにぐーたら過ごし、今日もなにもしなかったな、と思っても気にしない事。自分はなーんにもしていないのに、メイや唯奈が働いている姿を見ても気にしない事。無職に向けられる世間の冷たい視線を気にしない事。そういう、ある種の精神的強さが必要なのだ。残念ながら今の俺にはない。


 みんな働いているのに、俺だけぐーたらしているのは意外としんどいのだ。自分もなにかしなきゃという気持ちになる。


「そうですか、わかりました。ではせめて、気分転換にみんなで少し遊んでみませんか? 気分が晴れるかと思います」

「遊ぶ? なにをやるの?」


 俺がそう聞くと、メイは一度部屋をでて、台車のようなものを押してきた。そこには札束が大量に乗っている。一体いくらなのか、考えたくもない。


「遊びって、まさかこのお金を使って豪遊しろと?」

「このお金は、この後の遊びに使う小道具です」


 お金が小道具……? どういうことだ? 俺が疑問に思っていると、部屋の照明が暗くなり、ムーディーな照明に切り替わる。さらに、気持ちをざわつかせるアップテンポな曲も流れ始める。


「まずはこちらを飲みながら、少々お待ちください、もう少し準備があるので」


 メイはそういうと、グラスにシャンパンを注ぎ、フルーツを用意して部屋の外に一度引っ込む。一体これから何が始まるというのだろうか?


 とりあえず、お酒を飲みながら少し待つ。すると、メイと唯奈はビキニタイプの水着のような、露出の多い衣装でやってきた。そして、音楽に合わせて目の前で踊り始める。扇情的な踊りだ。そして二人は、俺の座るソファーまでやってきて、隣に座る。遊びって、こういうエッチなお店ごっこってこと!?


「さあご主人様、そのお金を衣装に入れてください。こういうお店では、踊り子にチップを払うのは常識ですよ」


 どうやら、このお金はチップ代だったらしい。俺はメイの胸元にそっとお金を一枚入れてみる。


「ご主人様、なんですかその入れ方は。遊び慣れていないようですね。いいですか、踊り子にチップを渡すときはこうです」


 そういうと、メイはお札を握る俺の手を自らの胸元にがばっといれてくる。


「踊り子にチップを渡す理由なんて、セクハラするために決まっています。セクハラしないでどうするんです?」


 そうは言っても、本当にがっちりやって大丈夫なのだろうか? 一応聞いてみる。


「唯奈、入れていいか?」

「いっぱい入れて♡」


 唯奈がそういうので、俺はお札を凛香の胸の間に入れる。


「私の事、気に入ってくれたならもっといっぱい入れて♡」


 唯奈が小首をかしげ、可愛らしく言ってくる。なので俺は彼女にどんどんお金を入れていく。


「あん♡ もっと、もっとちょうだい♡」


 こうして俺たちは、エッチなお店ごっこを楽しんだ。本物のお店にも興味が湧いてしまった。

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