あのあと、唯奈の幼馴染がどうなったのかというと、さすがに捕まることはなかったらしい。警察とメイから彼の親に報告することになり、それで示談になったとか。それでメイはそこそこの示談金を貰うことができたらしい。
示談金は親が立て替えたそうだが、唯奈の幼馴染の男がバイトして親に返すことになったようだ。
メイのような美少女を殴ったことにたいして、奴は親にめちゃめちゃ怒られたとか。まあ、あいつは本当はメイを殴るつもりはなかっただろうけど。メイが間に入ってくれなかったら、殴られていたのは俺だったはずだ。
逮捕はオーバーだと感じたが、それはメイが怪我をしなかったからだ。メイがあまりにも平然としていたから、大げさだと感じてしまっていた。だが、よく考えれば婦女子を殴って何の罪にもならないなど、あってはならないことだ。奴は示談で済んで良かったと、感謝するべきだろう。
こうして、突然知らない男に殴られそうになった話は終わった。
就職の為、今日も面接に行ってきた。結果は散々だった。今日の面接は、いわゆる圧迫面接であった。高圧的な態度で、ねちねちと自分の欠点を指摘され続けた。自分の欠点や短所など、他人に言われなくてもわかっている。
いい年なのに資格もない、経験もない、無職期間がある。これはもうどうしようもない。いくら人手不足でも、俺を雇おうという会社はなかなかないのだろう。少々へこんだまま、家に帰る。
「ただいま」
「おかえりなさい」
家に帰ると、玄関で待っていてくれたメイが笑顔で迎え入れてくれた。そして、俺を抱きしめて一言。
「大丈夫? おっぱい揉む?」
「……え?」
「ご主人様がすごく落ち込んでいらっしゃるようでしたので。男性が落ち込んでいるときは、こういうのが一番よいと聞いています」
「誰から?」
「ネットで」
ネットかよ。
「ご主人様、もう働くのは諦められたらいかがですか? そんなに落ち込むくらいなら、仕事などしなくてもいいではありませんか。お金なら私がだしますから」
しばらく胸を揉み、落ち着いた俺にメイが言った。
「いや、働く」
俺は断固たる意志で答えた。
ヒモになるには、ある種の才能が必要だと分かった。
何もせずにぐーたら過ごし、今日もなにもしなかったな、と思っても気にしない事。自分はなーんにもしていないのに、メイや唯奈が働いている姿を見ても気にしない事。無職に向けられる世間の冷たい視線を気にしない事。そういう、ある種の精神的強さが必要なのだ。残念ながら今の俺にはない。
みんな働いているのに、俺だけぐーたらしているのは意外としんどいのだ。自分もなにかしなきゃという気持ちになる。
「そうですか、わかりました。ではせめて、気分転換にみんなで少し遊んでみませんか? 気分が晴れるかと思います」
「遊ぶ? なにをやるの?」
俺がそう聞くと、メイは一度部屋をでて、台車のようなものを押してきた。そこには札束が大量に乗っている。一体いくらなのか、考えたくもない。
「遊びって、まさかこのお金を使って豪遊しろと?」
「このお金は、この後の遊びに使う小道具です」
お金が小道具……? どういうことだ? 俺が疑問に思っていると、部屋の照明が暗くなり、ムーディーな照明に切り替わる。さらに、気持ちをざわつかせるアップテンポな曲も流れ始める。
「まずはこちらを飲みながら、少々お待ちください、もう少し準備があるので」
メイはそういうと、グラスにシャンパンを注ぎ、フルーツを用意して部屋の外に一度引っ込む。一体これから何が始まるというのだろうか?
とりあえず、お酒を飲みながら少し待つ。すると、メイと唯奈はビキニタイプの水着のような、露出の多い衣装でやってきた。そして、音楽に合わせて目の前で踊り始める。扇情的な踊りだ。そして二人は、俺の座るソファーまでやってきて、隣に座る。遊びって、こういうエッチなお店ごっこってこと!?
「さあご主人様、そのお金を衣装に入れてください。こういうお店では、踊り子にチップを払うのは常識ですよ」
どうやら、このお金はチップ代だったらしい。俺はメイの胸元にそっとお金を一枚入れてみる。
「ご主人様、なんですかその入れ方は。遊び慣れていないようですね。いいですか、踊り子にチップを渡すときはこうです」
そういうと、メイはお札を握る俺の手を自らの胸元にがばっといれてくる。
「踊り子にチップを渡す理由なんて、セクハラするために決まっています。セクハラしないでどうするんです?」
そうは言っても、本当にがっちりやって大丈夫なのだろうか? 一応聞いてみる。
「唯奈、入れていいか?」
「いっぱい入れて♡」
唯奈がそういうので、俺はお札を凛香の胸の間に入れる。
「私の事、気に入ってくれたならもっといっぱい入れて♡」
唯奈が小首をかしげ、可愛らしく言ってくる。なので俺は彼女にどんどんお金を入れていく。
「あん♡ もっと、もっとちょうだい♡」
こうして俺たちは、エッチなお店ごっこを楽しんだ。本物のお店にも興味が湧いてしまった。