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第136話 強盗団④

「さて、入るぞ」

 リュウヘイは部屋へと入った。俺もそれに続いた。

 中へと入ると、まずは長い廊下があった。普通のマンションでは考えられない長さだ。それを歩いて奥へと行く。

 奥まで行くとリビングがあった。置いている家具はとても地方公務員が買えるようなものではない高級品であることは、俺でもわかった。

「どうするんですか?」

 俺は部屋をキョロキョロと見ながら訊いた。

「とりあえずパソコンがないか探してくれ」

 と言うので俺は各部屋を見て回った。

 するとすぐに見つかった。ノートバソコンが書斎の机の上にあった。

「ありましたよ」

 そう言うと、リュウヘイが来て、

「中を見てメールとか確認してくれ」

 と言うのだった。

 俺はパソコンを立ち上げた。幸いパスワードなので設定はなかった。

 リュウヘイは部屋の中をゴソゴソと探っている。

 俺がメールボックスを開けて見ていると、ほとんどはネット通販のメールとかどうでもいいようなものだった。

「これといって重要なものはなさそうですよ」

 俺が言うと、

「じゃあ、ネットでなにを閲覧してるかを確認してくれ」

 とリュウヘイは指示した。

 俺はすぐにブラウザを立ち上げて、履歴を見た。

 履歴を見ると、ここもネット通販のページが多かったが、途中から特定の住所の検索履歴が出てきた。

「なんか住所を検索してますね」

 俺は履歴をスクロースしながら言った。

「どれ、見せてくれ」

 リュウヘイもパソコン画面をのぞき込んだ。

「ははーん、これはおそらく強盗に入る家の住所だな。どこに入るか前もって調べてんだろ。こうやって住所を調べて、ストリートビューとかも見ながら、周りの状況を確認しているってことだろうな」

 とリュウヘイは言った。

「なるほど。そういうことなんですね。で、どうします?」

「ちょっと待ってくれ」

 リュウヘイはそう言うとパソコンを操作して、履歴を何度も確認した。

「おそらく次のターゲットはここだな」

 リュウヘイが言った。

「どうしてわかるんですか?」

「まずはこの住所だけ何度も検索している。それに調べた日付から見ても、ここの可能性が高い。それにここの住人のことも検索しているしな。見てみろよ」

 リュウヘイが言うので、俺が見てみると、「高橋設計事務所」を検索している履歴があった。

 「高橋設計事務所」の所在地はまさにそこだった。

「次にここを狙うとするといつなんですかね?」

「それはまだわからねぇけど、そんなに遠い未来ではないだろう」

「そうなんですね」

「それと、これをちょっとクリックして開けてくれ」

 リュウヘイが指さしたエクセルのファイルを、俺はクリックして開いた。

「やっぱりな」

 とリュウヘイが言った。

「なんですか?」

 開かれたエクセルには数字となにやら名前のようなものが並んでいる。

「これはおそらく強盗に入っているメンバーに配っている金だよ。これがメンバーの名前で、これがその金額だろう。強盗で得た金の分配表ってことだな」

「なんでこんなものを作ってるんですか?」

 俺からしたら、強盗なんて荒っぽいことをする連中が細かい帳簿をつけたりするイメージがなかった。

「それはこいつの性格ってこともあるんだろうけど、それよりもこいつにとって強盗はビジネスってことなんだろうな。だからこれは強盗で得た金の分配とも言えるけど、要は給料ってことだな」

「そういうことですか。そうなるとこのメンバーを一人一人やっつけて行けばいいってことですね?」

「そういうことなんだが、どうやってこの連中の居所を見つけるかだ。ここにはニックネームのようなものしか書いてないしな」

 エクセルの表に書かれている名前は、トニーとかバイク乗りとかあだ名で書かれているのだ。メンバーの住所なんかはもちろん書かれていない。いや、ひょっとしたらリーダーの楠本も住所なんて知らないということも考えられる。

「どうするんですか?」

「とにかく、次のターゲットと思われる場所を見張っているのが簡単そうだな」

 とリュウヘイは言った。

 確かにそれが一番簡単そうだ。

「それから、このフォルダも開いてみてくれ」

 俺はリュウヘイに言われて「みちよ」と書かれたフォルダを開けた。

 するとそれは写真だった。写真がフォルダの中にずらっと並んでいる。

 その一つをクリックした。

 表示された写真は、男女が二人で映っていた。どうやらデートの時にでも撮った写真のようだ。

「これがたぶん楠本だろ。それでその横が付き合ってる女だな。ケッ、まぁまぁの女と付き合いやがって」

 リュウヘイは苦々しそうに言った。

 女はきつそうな性格をしている印象だったがかなりきれいだった。まぁまぁというのはリュウヘイとしてはきれいと認めたくないから言ったことだろう。

 楠本は想像と違い優男だった。色白の細身で真面目そうな感じである。

 とても強盗団のリーダーとは思えない風貌だ。

 写真を閉じると、

「うん? このフォルダはなんだ? ちょっと開いてみてくれ」

 とリュウヘイが言った。

 俺はそのフォルダを開いた。

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