作者のANAMATIAさんは、西洋風・和風のヒストリカルなBLの他、現代もののラブコメちっくなBLも書けて幅広い作風が特色の作家さんです。その中でも本作は、ヒストリカルな西洋風世界を舞台になんと寝取られちゃった伯爵令息テオを主人公に据えています。寝取られを題材にする作品は、大抵ひどいざまぁがあって私は引いてしまうのですが、本作はそこまでひどいざまぁがないので心地よく読めます。
寝取られを題材にした意外性もさることながら、テオがすんなりゲイであることを自認できずに葛藤するのも、安易にいきなり両想いのラブラブ展開にならないのもよいです。最新話(第48話)に至るまで親友のレオポルドと幼馴染のオズヴァルドのどちらが当て馬なのか分からないほど、最高に焦れ焦れしています。ある時はレオが本命かなと思わせておいて、次にはオズがやっぱり本命なのかと読者を翻弄させるほど、テオの気持ちが揺れに揺れて続きがとても気になります。
主人公のテオのように儚げな美男子を私は勝手にひ弱男子と呼んでいるのですが、そのか弱さに最高に萌え、庇護欲がくすぐられます。テオの相手役のレオはちょっと乱暴なツンケン男子、オズは大人っぽいけどちょっと鈍感(純情?)なところもあってそれぞれ違った魅力があります。その他の脇役(特にテオのお姉さん)も主人公級キャラに負けず劣らず特徴的なキャラクターで誰が誰だか分からなくなるようなことがありません。情景も冗長にならずに程よくしっかり描写されています。だから読んでいて登場人物や情景が目に浮かび、読者を飽きさせません。
物語はまだまだ続きますが、これからテオが自分の性的志向とどう向き合ってレオとオズのどちらを選ぶのか、続きを楽しみにしています。