「図星ですね。でも、お会いできてよかった。ずっと長く続いていた戦争の時代が終わったのですからね。これからは平和な時代です。文化や学びが、戦争の代わりとなるでしょうね。それは、人を傷つけるのではなく、人を豊かにしてくれるはず。あなたと会うことができて、その確信が持てました。翠蓮様のお仕事を私たちにも手伝わせてください」
「ありがとう。こちらからもぜひともお願いしたいわ」
戦争の時代が終わった後は、知識の時代がやってくる。今後の世界は、どれだけ多くの知識を生み出すことができるのかがカギだと思う。知識を広めて、新しいものをたくさん作っていく。そして、それこそがこの世界をどんどん発展させていくことができる唯一の道。
戦争の時代は、いかに敵のものを壊すかに焦点が当てられていた。たしかに、そこで大きな技術的な発展があったのも事実。でも、それは社会の傷を大きく広げた。今は傷の治療段階にある。
この傷を放っておけば、血は流れ続けて、いつか死に至る。
人の心がこれ以上、荒まないようにするためにも、改革は必要だと思う。
また、私たちは力強い仲間に巡り合えた。仲間がどんどん増えていく。それは、私たちが一歩一歩前に進んでいることの証明で……皇帝陛下の理想に向かっている。
彼の力になりたい。
そのためには、まずは身の回りの場所から変えていくことが大事ね。
男女の関係は人間の基本的な欲求の根源だけど、それだけに問題が大きくなるのも事実。有名な楊貴妃は、皇帝が彼女に寵愛を向けすぎて、彼女の親族が政権を握るようになり、反主流派との政治闘争の末に、大反乱である安史の乱が起きた経緯もある。
このような事例をあげなくても、後宮が大きくなりすぎたり、権力を持ちすぎると危険なことになる。予算が国家の運営を圧迫したり、野心家が暗躍するようになったり……
先帝陛下が、英雄色を好むという言葉通りの運営をしたことによって、後宮は危険水域に達しつつある、肥大化しつつある後宮を改革していくことが必要だ。
そして、私がそれを進めている矛盾点に気づいてしまう。
後宮改革を進めるために、後宮の私が政治に深く関与してしまうことは危険ではないかということに。
だからこそ、私たちはこの関係を続けなくてはいけないんだ。
男女の仲になってしまえば、間違いなくバランスが崩壊する。
それは国家への悪影響につながりかねない。
あんなに責任感がある陛下だから、それはよくわかっているはずだ。私も自分でそれを理解している。どんなに陛下のことを思っていても、私たちは普通の夫婦になることはできない。
どんなに恋焦がれても、つらくなるだけ。その事実からできる限り目を背けようとして、私は前に進んでいた。そして、それを止めることはできない。陛下とは、これからも先もこの共犯関係を続けていかなくてはいけない。それが、私の愛する陛下の意に従うことだから。