どうして、こんな若い人が。
そんな視線である。
雷梧は緊張して、顔面に汗が噴き出た。
観客もそれに気付き、「小僧、気に入られたみたいだな」と囃す。
雷梧は真っ赤になってうつむき、固まってしまった。しかし周りは、更に囃す。
とうとう雷梧は居たたまれなくなり、適当な額の銀子を置いて、駆け足で店を出てしまった。
朝になった。
昨日の葡萄酒がまだ効いているようで、頭が朦朧としている。
雷梧は旅籠の寝床で、昨日のことを一つ一つ思い出した。最後に、胡姫に見つめられたところに至り、思わず布団をかぶる。
あれでは、逃げ出したようなものだ。
だから、今日も行って、彼女たちの踊りを今度は動じずに見ていよう。
精一杯考えて、そんな反省をした。
そのとき、部屋の戸を叩く音がして、王金鹿が呼びに来た。
旅籠の一階が食堂になっており、すでに方翔が朝食をとっている。
雷梧は彼らと食事をしながら、笑顔になる。
「思っていたより、ずっと楽しいところでした。今日は、土産を買いに行こうと思います」
しかし、二人は苦笑いを見せる。
「それが、すぐに戻ることになってしまいまして。これを食べたら、范陽へ出立します」
雷梧は驚いた。四、五日はゆっくりできると思っていたのに。しかし、連れてきてもらった身では嫌だともいえず、結局また六日ほど馬を飛ばし、范陽へと戻って来てしまった。