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第8話

 どうして、こんな若い人が。

 そんな視線である。

 雷梧は緊張して、顔面に汗が噴き出た。

 観客もそれに気付き、「小僧、気に入られたみたいだな」と囃す。

 雷梧は真っ赤になってうつむき、固まってしまった。しかし周りは、更に囃す。

 とうとう雷梧は居たたまれなくなり、適当な額の銀子を置いて、駆け足で店を出てしまった。


 朝になった。

 昨日の葡萄酒がまだ効いているようで、頭が朦朧としている。

 雷梧は旅籠の寝床で、昨日のことを一つ一つ思い出した。最後に、胡姫に見つめられたところに至り、思わず布団をかぶる。

 あれでは、逃げ出したようなものだ。

 だから、今日も行って、彼女たちの踊りを今度は動じずに見ていよう。

 精一杯考えて、そんな反省をした。

 そのとき、部屋の戸を叩く音がして、王金鹿が呼びに来た。

 旅籠の一階が食堂になっており、すでに方翔が朝食をとっている。

 雷梧は彼らと食事をしながら、笑顔になる。

「思っていたより、ずっと楽しいところでした。今日は、土産を買いに行こうと思います」

 しかし、二人は苦笑いを見せる。

「それが、すぐに戻ることになってしまいまして。これを食べたら、范陽へ出立します」

 雷梧は驚いた。四、五日はゆっくりできると思っていたのに。しかし、連れてきてもらった身では嫌だともいえず、結局また六日ほど馬を飛ばし、范陽へと戻って来てしまった。

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