「今週末、ルルポート豊洲でコンサートをする」
「今更、ショッピングモールで無料コンサート?!」
私は自分でも自然とでた言葉に驚いてしまった。
無料のショッピングモールならば人を集められていた『フルーティーズ』。
しかしながら、度重なる有料コンサートをオレンジランドで開催したことにより、『フルーティーズ』のイベントは無料で見られないものという意識ができている。
私の考えている事に気がついた林太郎がニヤリと笑った。
「ルルポート豊洲は特殊な地域だ。半径500メートル以内に1000人規模の小学校が3つもある」
「そんなに子供がいるの? なんで?」
「湾岸のタワマン乱立地域だから。小学生と未就学児が爆発的に多い」
「子供がお仕事体験できるキッズランドもあるよね」
林太郎が私の言葉にゆっくりと頷く。元々住んでいる子達に加えて、子供向けの施設がある場所。
確かに沢山の子供が集まりそうだ。
「中学生のおしゃれな女の子っていうのは、小学生以下の女の子の憧れなんだよ」
私は林太郎の言いたい事を理解した。確かに美少女戦士ブレザーサンもプリティーキュアも中学生だ。
私も子供の時に変身ステッキを買って貰った覚えがある。
「その時、私は保護者枠だね」
林太郎が私の手をポンポンと叩く。
以前の彼は私にしょっちゅうキスをしてきたが、最近はポンポンが多い。
これは彼が桃香達にもやる仕草だ。
(別にキスして欲しいわけじゃないけど)
「子供達の間で爆発的にヒットすれば、運動会やお遊戯回でも使って貰える」
「そうだね。でも、『フルーティーズ』のメインのお客さんってアイドルオタクというか、ロリコンの傾向のあるおじさんだよね。イベントに子供が集まってトラブルにならないかな」
「豊洲行ったことある? そういうアイドルオタクが居ずらいファミリーエリアだよ」
「ない」
秋葉原に子供が居ずらいのとは真逆の場所ということだ。
「子供に対してお金を掛ける傾向の小金持ちが多いから、グッズが売れるよ」
「まずはグッズをヒット商品にして、曲を浸透させるって事だね。それにしても、休みなく働いてあの子達は大丈夫かな?」
「ご褒美旅行があるから平気だよ。流石に来年9月までは持たないけど、年末までは持つ。人参を吊るして常に走らせるのは基本」
「⋯⋯そっか」
林太郎が頑張ってくれているのは分かるが、私は彼の言葉の端々が気になり始めていた。
「小金持ち」「人参を吊るす」など、どこか人を小馬鹿にしたような物言いが苦手。
「なんか言いたいことある?」
小首を傾げて聞いてくる彼の少し幼い仕草にはキュンとする。
彼はまだまだ若いから、言葉尻を捉えて非難するのはいけないと思い直した。