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第100話 おそろいのカイになりました!

 お兄さんみの感じられるお顔で、クロウの額を肉球でポンポンしているにゃんごろー。

 けれど、にゃんごろーのお兄さんタイムは、すぐに終了した。

 最後のお兄さん顔ポンポンの後、「にゃふっ」と笑ったにゃんごろーは、いつもの子ネコー顔に戻った。そして、その子ネコー全開の笑顔を、長老へと向ける。長老に尻尾を掴まれているので、長老によって尻尾を体に巻き付けられている最中みたいなことになった。

 そのことに気づいていないのか、それとも、気にしていないだけなのか。

 にゃんごろーは、嬉しそうな子ネコー顔で、長老に喜びの報告を始めた。

 尻尾を半分グルっとされたまま、弾んだ声での報告を始めた。


「ちょーろー、ちょーろー! きいちぇー! にゃんごろーね、おしょろいの、きゃいににゃっちゃの! しゅぎょーの、にゃかまが、できちゃっちゃ!」

「ほーか、ほーか。良かったのぅ」

「うん! よかっちゃ! にゃんごろー、きゃいににゃるのも、にゃかまも、はじめちぇ! ほんちょはねぇー…………こねこーのにゃかまが、ほしかっちゃんらけろ……。んー、れも! れも、うれしー! にゃんごろーは、とっちぇも、よろこんでる! にゃふふふふ!」

「うむ、そうじゃのぅ。今は、にゃしろーも魔女のところじゃし。森には今、にゃんごろーしか子ネコーはいないからのぅ。じゃが、人間の仲間もいいものじゃぞ。せっかくできた仲間じゃ。この縁を大事にするといい」

「うん! だいりにしゅる!」


 報告されるまでもなく、最初から最後まで一部始終を見聞きしていた長老だったが、余計なことは言わずに、子ネコーの頭をポフポフしてやった。長老自身にも、マグじーじを始めとする三人の人間のお仲間がいるせいか、その言葉には実感が籠っている。マグじーじが、ちょっと照れたような顔で視線を彷徨わせた。

 なんだか、ほっこりといい雰囲気になった。

 泥沼に引きずり込まれた気分のクロウも、現状森でただひとりの子ネコーの初めての仲間と聞いて、少し気分が浮上していた。あんなに喜んでいるなら、引きずり込まれた甲斐もあったかな、と思い始めていた。断った後に今の話を聞かされたら、きっと苦い思いを噛みしめることになっただろう。そして、そのことがミルゥにバレたら、とんでもなくひどい目にあわされる羽目になったことだろう。

 ――――とはいえ、やはり。

 『端っこマスター』の称号だけは、とことん不本意なのだが。


「ちゃーんと、魔法の修行も頑張るのだぞ」

「うん! もちりょん! がんばるじょー! にょっ! にゃっ! にょっ!」


 ほっこりいい話タイムは、ここで終了したようだ。

 長老に修行を頑張るように激励されて、にゃんごろーは「むふん」と鼻息も荒く、子ネコーパンチをシュシュッと繰り出す。腕が短いおかげで、正面に立つ長老はノーダメージだった。


「よーし! さっしょく、しゅぎょーかいし! えーちょ、ゆかは、しゃっき、しらべちゃから、ちゅぎは…………かべ!」


 盛大な脱線により中断されていた『魔法の通路』調査の再開を元気いっぱいに宣言するにゃんごろー。脱線しすぎて、脱線した先の方が本線のようになっていたが、こちらこそが本線なのだ。

 宣言と共に、にゃんごろーはクルンと体の向きを変えた。半巻きになっていた尻尾が体から解ける。爛々とお目目を輝かせ、にゃんごろーは両方のお手々を壁に向かって突き出した。

 そのまま、『前に倣え』で壁に向かって進軍を開始。

 通路の真ん中から、クロウのいる側の壁に向かっての進軍は、張り切っている割には、微妙に足取りがおぼつかなかった。お顔は前を向いているのに、ランランと弾む子ネコー心をベースに爛々と光り輝くお目目は、青い壁の至る所に向かって目まぐるしく動き回っているからだ。

 大した距離ではないから大丈夫だろうと思いつつも、クロウは万が一の時に子ネコーを受け止められるよう構えた。

 幸いにも、子ネコーは躓いたり転んだりすることなく壁に辿り着くことが出来た。

 けれど、思いもかけない事態が起こった。

 クロウのその心構えは、予想とは違うところで、大きく役立つことになった。


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