なんだかよく分からないうちに、なぜか勝手に一緒に行くことになってしまった、キノコの森で出会った、衣装が妖精風魔法少女の
見た目は、内気で大人しい妹風だし、仕草なんかもそうなんだけど。
中身の方は、割と結構アレな感じの子だと思う。
そして、いかにも人見知りしそうな、引っ込み思案な感じの外見なのに、意外とおしゃべりだ。
まあ、今までずっと一人でいたみたいだし、話し相手が出来て嬉しくなっちゃてるのもあるとは思うけど。
キノコの森に住んでいたのは心春だけで、ここには
怪しく光るキノコたちの間を歩いている間、心春は、ほとんど一人で喋っていた。
それによると。
キノコの森に全っ然、妖魔がいないのは、心春が全部やっつけちゃったかららしい。
「あ。この森の妖魔は、私が全部、殲滅しちゃいました! でないと、安心して休めないじゃないですか?」
ハニカミながら、殲滅と言われても。も。
で。
そのうちに、話は心春と月華の出会い編に突入した。
心春も、あたしと同じで、学校帰りに光る蝶々を見つけて気を取られているうちに、気が付いたら闇底のキノコの森に彷徨い込んでいて、でっかいカマキリみたいな妖魔に襲われたんだって。
「必死に森の中を逃げ回っていたら、月華が、どこからともなく颯爽と現れて、いとも簡単に妖魔を殲滅して、私を助けてくれたんです。それだけじゃない。私を助けてくれただけじゃなくて、私のことも魔法少女にしてくれるって言うじゃないですか」
そっか。心春は、それでさっそく“血の契約”をして、魔法少女になったんだね。
血の契約とか下僕とかいう単語にビビったあたしは、アジトに連れていかれて、一応説明的なものを聞いてから魔法少女にしてもらったけど。
「力をもらって。魔法少女に変身して。凄く感激しました。………………それで、ふと気が付いたら、月華はもういなくなっていたんです」
あの時、あたしもあっさり魔法少女になっていたら、あの沼地に置き去りにされていたんだろうなー。
早まらなくて、よかった。
「きっとこれは、月華からの試練に違いない! 月華の騎士としてふさわしい力を身に着けてから、後を追ってこい。そういうことなんだと思って、頑張りました」
思い込みの激しい子だよね?
でも、それで、森の妖魔を全部やっつけちゃうとか、ちょっと凄すぎない?
「あ。武器は、弓だけじゃなくて、剣とロッドも使えます。どれか一つに決められなくて、お恥ずかしい……。でも、おかげで、どんなタイプの妖魔が出ても臨機応変に戦えます!」
も、もしかして、この子。
いろんな意味で、魔法少女としてのスペックが高い?
やばい。
あたしが一番のポンコツかも。
フラワーがどうやって妖魔と戦うのか知らないけど、人形の“もと”にした仕打ちを考えると、やっぱりえげつない方法でフラワー的に殲滅とか、しちゃいそうだし。
「あ。そういえば、みなさんはどうやって妖魔と戦っているんですか?」
ここでようやく、心春はあたしたちに話を振ってきた。
でも、よりによって、その話題かい!?
「あたしはねー、カードかロッドだよ。一回、鞭も使ってみたことあるんだけど、あれは失敗だった。なんか、自分の体に絡まっちゃってねー。あははー」
マジシャン! バニーさん!
いや、そうじゃない!
「あはは、じゃないですよ、
「あは、ご心配ありがとー。でも、その時は、カードでなんとかしちゃったし、さすがにその後はもう鞭は使ってないからさ。それにさー、妖魔の前で、バニー系マジシャンが鞭に絡まっている姿をさらしてもねー」
バニー系マジシャンって。
いや、そこじゃない。てゆーか、何言ってるんですか、月見サン!?
「
はっ。こっちに、玉が飛んできた。
心春から、探るような視線が飛んでくる。
魔法少女としての挨拶も地味だったし、きっと実力を疑われているんだ。
まあ、実際、初心者レベルだけどね!
「禁断のライトと、スプ…………星屑のシャワーかな?」
「禁断…………。星屑のシャワー…………。なんか、素敵ですね! 早く、見てみたいです」
「あ、あははー。お見せするほどのものではー……」
一応、魔法少女としてそれっぽく言ってみた。
嘘は言っていない。嘘は。
とりあえず、シャワーの星屑度はアップしておこう。せめて。
「それで、
「わたし?」
あ、それ。あたしも気になる。あんまり、聞きたくない気もするけど。
何か、恐ろしくもおぞましい単語が飛び出してきそうで、さ。
でも。
不気味に笑うフラワーの口から、囁くように転がり出てきたのは、意外な答えだった。
「わたしは、妖魔と戦ったりしない。そんな、野蛮なことはしない」
「え?」
「ええ?」
「えええええええ?!?!」
な、何、言ってるの?
てゆーか、それで今までどうやってたの?
今の今まで、一度も妖魔と会ったことがないとか、そんなことはないよね?
あ、でも、これで。魔法少女最下層の立ち位置から抜け出せる? 殲滅は出来ないけど、撃退くらいはあたしにも出来るし!
ソ、ソワソワ。ちょっと、期待。
「えーと、妖魔に会ったら、逃げる! ってこと?」
「違う」
「え? じゃあ、今までどうしてたんですか?」
月見サンと心春の不思議そうな視線と、あたしの期待に満ちた視線を受け止めて、フラワーは足を止めた。つられて、あたしたちも立ち止まる。
森の出口は、すぐそこだった。
怪しく光るキノコたちの光に慣れた目に、闇空の暗闇がなぜだか眩しい。
「別に、どうも? ジッと見ていると、向こうが勝手にどこかに行くから」
「なっ!」
「あー…………」
「ああ…………」
フラワーの言葉をどういう意味に受け止めたのか、心春は感激に打ち震えているようだった。
あたしと月見サンは、何かを察して力なく遠くを見つめる。
きっと、不運にもフラワーと出会ったしまった妖魔たちは、野生の勘(?)で、フラワーの中に眠る潜在的な得体のしれない何かを感じ取ったんだろう。
フラワーには勝てたと思ったのに、むしろ完全敗北だよ。
てゆーか、もしかしてフラワーって、闇底最強の魔法少女生物じゃない?
どうしよう。
これは、もしかしたら、あたしたち魔法少女生みの親であるはずの月華でさえ、フラワーには敵わないかもしれない。
なすすべもなく、フラワーの呪い的魔法で男の人にされちゃうかも!
どうしよう。
月華、逃げて。ちょー逃げて!
って、あたしたち今から、その月華を探しに行くんじゃーん!?
あ、あたしは、一体どうしたら?
どうしたらいいの?