これ一体、どういう気持ちで見ていればいいんだろうな。
えー、只今。
現場である、アジトの周りにある草原を抜けた先の荒野では――――。
月下さんは、フラワー・ガーディアンにぎゅってされたまま、モフモフナデナデされてて、なんか放心中だし。
そんな中、あたしたちの敵であるはずの
「おい、おまえ! どういうことだよ! おまえは、ボクの使い魔、ボクの魔法少女だろう!? 勝手なことをするな!」
「お断り。あなた、私の好みではないし。あまり役に立たなかったし。期待外れも、いいところ」
使い魔の魔法少女にもてあそばれちゃった華月は、フラワーに向かってキーキー騒いでいるけど、なんか、まったく相手にされてないっていうか、あっさりいなされちゃっていてさ。
うん、どうしよう?
あいつ、嫌なヤツだし、許せないヤツだし、敵なのに、可哀そうになってきちゃったよ?
てゆーか、フラワーが悪役にしか見えないんですが?
だって、しっとり余裕の表情で、なんかさ、華月よりもずっと勝手なことを言ってなかった?
眼中にないっていうのは、こういうことですよーっていう、お手本を見せられているような、そんな感じなんですが?
あたしたちは、これを見て。
一体、何をどうすればいいの?
いや、だって。
これ、これさ?
マンガとかアニメとかだったらさ?
クライマックス、っていうの?
本当だったら、いっちばん盛り上がるシーンになるはずのところだよね?
強敵とのラストバトル!――――と思って現場に急行したら、仲間の一人が捕まっていた!――――とかさ!
めっちゃ、ハラハラドキドキ、するところだよね?
なのに、なんでこうなってるの?
捕まったはずの仲間は、洗脳されたわけでもないのに、一人で勝手なことしてるし?
ラスボスだったはずの妖魔は、可哀そうでしかないし?
本当に、どうすればいいの?
どうすればっていうか、本音を言えば、もうアジトに帰りたい。
だって、結末を見届けたくない。
だって、だって。
フラワーな予感しかしないもん!
――――――――なーんて、脳内で一人会議をしていたら、ベリーがポツリと呟いた。
背景が宇宙になっているみたいな顔をしたまま。
「前回はさ、正直、足手まといになっていた自覚はあるわけよ。私が捕まっていなかったら、あの二人、もっと本気で戦えていたと思うのよね。だから、今度こそ、あいつを仕留められるって、そう思ってた」
いやいやいや! 足手まといだなんて、そんなこと思ってないから!
だって、前回は。ベリーを助けることも大事な目的の一つだったし。それに、そもそも最後の最後で華月を仕留めそこなったのは、ベリーのせいじゃないし。月華が、おさるさんだったせいだし。月華がもう少しかしこかったら、あそこで終わっていたと思うよ。本当。
そう言いたかったけれど、ベリーがさっきのセリフで一番言いたかったことは、そこじゃないっていうのもなんとなく分かったので、今は口を噤んでおく。
代わりに、月見サンが合いの手を入れてくれた。
「あー、うーん。今回はー、なんていうか、いろんな意味で、フラワーがダークホースになっちゃってる感、あるよねー」
「うん。二人が失敗したら、その時は私が、って。ずっと、思っていたのに。…………今は、まったくそんな気にならないわ。むしろ、あの空間と関わり合いになりたくない……」
「それは、みんな思ってるよー……」
「このまま、あいつら置いて帰っても、問題ないような気もするけどな。なんかさー、しれっと全部が解決しているか、振出しに戻って仕切り直しになるか、どっちかって感じだよなー。とはいえ、本当に帰ったら、置いていかれた月下美人が荒れ狂いそうだからなー。やっぱ、ナシだよなー…………」
月見サンが乾いた笑い声を虚ろに響かせ、
あー、そうか。
そうだね。帰りたいけど、帰ったらダメだよね。
月下さんを怒らせたら、怖そうだもん。
「もう! 何を言っているんですか! お三方の愛の行方を、しっかりと最後まで見届けなくては!!」
さらっと華月の存在を無視しているところが、さすがだ。
てゆーか、お三方って言ったけど、月下さんの役回りは、どうなるの?
は!?
それとも、お三方って、フラワーと月華と華月のこと?
存在を無視されたのは、もしかして月下さんの方ってこと!?
ちょっとだけ、気になる。
でも、聞かない。絶対に、聞かない。
あたしは、存在をギラつかせている心春から目を逸らし、癒しを求めた。
いろいろと分かってなさそうで、結果的にマイペースなルナを見て和むことにした。
ルナは、花の塊にモフモフされている月下さんが気になってるみたいだね。じっと見てる。
もしかして、ルナもやってほしいのかな?
ふふ。あれが、羨ましいなんて、ルナは可愛いなー。お胸のサイズは、可愛くないけど。あたしは、そっちの方が羨ましいかなー。
ううん、癒されたけど、傷つけられた。
あたしは、真の癒しを求めて、月見サンの空飛ぶ竹ぼうきの後部座席にいる
夜咲花は、あたしたちの間に漂う微妙な空気に気づかないまま、月華を見つめていた。フラワー・ガーディアンに圧されてジリジリ後退中の月華を、心配そうに見つめていた。
ちょっと、胸がキュンとした。
だって、夜咲花ってば、フラワー的な意味で心配しているんじゃないっぽいんだもん。
背後にフラワーがいるから、そこが心配…………とかじゃなくて、純粋にフラワー・ガーディアンに手こずっている月華を心配しているんだ。
たぶん、夜咲花の中では、まだ黒幕は華月のままなんだろうなー。
とっくに、フラワーに乗っ取られちゃってるのに、月華を心配するあまり、その後のフラワー劇場は目にも耳にも入ってなかったんだろうなー。
夜咲花っぽいな。可愛い。
で、その黒幕を乗っ取ったフラワーが、今、何をしているのかというと。
えー。猿回しならぬ、妖魔回し?
なんかねー。
怒り狂ったおサルさんみたいになっている華月の猛攻を、うまく花鎖も使ってあしらいつつ、ひらりひらりと優雅に躱しているんだよね。
余裕すぎて、襲われているというよりも、ペットと遊んであげているみたいになってるんですけど。
フラワーの独壇場って感じなんですけど。
なんか、もう。
前回の戦いは、何だったんだろう…………って気分になってくる。
いや、ベリーを助けた大事な戦いではあったんだけど。
この現場に急行するまでは、華月ってすごい強敵だと思ってたのに。
今は、ただのザコ敵っぽい…………。
なんて、すっかり気が緩み切ったその時。
事態は、大きく動いた。
いや、え?
何?
どゆこと!?
フ、フラワー!?!?