ふ、ふわぁおぉぉおおおおおおお!
こ、これは、まさに
まあ、お花の名前だってことは知ってるけど、どんなお花かは知らないんだけどね! でも、なんか名前のイメージ的には、これぞ月下美人って感じーぃ。
素敵!
可愛い!
そして、ほんのり上品に色っぽい!
最高! 無敵!
月の光から生まれた妖精みたいに儚い美しさ。
でも、妖魔を倒しちゃうような強さも兼ね添えている!
もーう!
なんで、間にジャージを挟む必要があったのか疑問なくらいに、めっちゃいいんですけど!
淡い黄色なのは、一緒なんだけどね。
運動する系なのも、一緒なんだけどさ。
ジャージでも、レオタードでもない、月下さんが選んだのは!
バレエダンサー風魔法少女!
月の妖精役(もちろん主役!)を余裕で勝ち取る似合いっぷりなんですけど、なんでそんなに恥ずかしそうにもじもじしちゃってるんですか!
似合ってます! 似合ってますよ!
バレエの発表会…………じゃない! えーと、舞台? うん、舞台のポスターに使ってもいいくらいのバレエダンサーっぷりですよ?
髪の毛は、ゆるふわっとしたアップにしてあって、ふわんふわんしているおくれ毛が色っぽい。
肩が出てるので、鎖骨がバッチリ見えちゃってるんですが、うん。鎖骨、きれいだなー。あと、お胸の辺りもねー。いい感じにボリューミーで、素直に羨ましい……。
スカートの丈はー、あんまり広がり過ぎていないミニ! でも、後ろ側には、透け感のある少し濃いめの黄色の布が、妖精の羽のように腰の辺から生えていて、神秘的!
可愛いと大人っぽさを兼ね添えた、素晴らしい魔法少女コスチュームだと思います。
「ど、どうかしら? クラスにバレエを習っている子がいて、ちょとだけ羨ましかったのよね。これなら、私が着ていても、そんなにはおかしくないわよね? 成人しているプロの人たちは、舞台に立つときは当然、こういう衣装を着ているんだし。まだ、18歳の私が着ていても、おかしくないわよね?」
「全然、おかしくないですよ! 綺麗で可愛くて、お色気もあるけど神秘的で、月下さんによく似あっています!」
「そ、そう? なら、いいのだけど…………」
全力で褒めちぎると、もじもじしながら照れ笑いを浮かべる。
他のみんなにも褒められて、頑張って隠そうとしているっぽいけど、かなり嬉しそうだ。
なんか、こういう月下さん、新鮮で可愛いな。
「うーん。確かに、似合ってるし、きれいでかわいいけどさ。月下ちゃん。なんで、靴はバレエシューズじゃないの?」
「う。だ、だって。習っていたわけじゃないし、歩きにくそうじゃない。別に、私はバレリーナなわけじゃなくて、バレリーナ風の魔法少女なんだから、いいでしょ!」
月下さんの全身を嘗め回すように見ていた月見サンが、月下さんの足元にじっと視線を固定しながら、「異議あり」をした。
言われてみれば、確かに。
バレエシューズじゃなくて、ハイヒールだな。これはこれで、違和感なくて気づかなかった。
淡い黄色の衣装の下には、白いタイツを穿いていて、足元にはハイヒール。
腰からヒラヒラしている妖精の羽っぽい布に近い、濃い目の黄色。ちょっと曇った感じの、ガラスっぽいような、不思議な素材のハイヒール。いかにも、妖精のお姫様が履いていそうな不思議素材。高さは、5センチくらいあるのかなー?
これはこれで、歩きにくそうだと思うんだけど、それはそれとして。
二人の掛け合いは、まだ続く。
「えー!? つま先に、ドリルとかつけてさ、地面にドリルをめり込ませながら歩けばいいんじゃない? うん! ナイスアイデア! すっごく、いいと思う! それにほら、妖魔と戦う時に、武器になりそうじゃない!? 術とか魔法が効かない相手には、物理で! ドリルで戦っちゃえ! みたいな!」
「嫌よ! そんな歩き方! それに、ドリルで妖魔と戦ったりしたら、妖魔を突き抜けて、そのまま、ドリルで地面にめり込んでいきそうじゃない!」
「あは! あはは! た、確かにぃー! く、くふ。くふふふふ。妖魔を倒して、そのまま華麗に撤退! つま先のドリルで回転しながら地面にめり込んでいくバレリーナ風魔法少女! ふっ! あはは! それ、いい! あははははははは!」
「……………………何がそんなに面白いのか、さっぱり分からないのだけど」
…………月見サン。
乙女の憧れに、小学生男子の発想を混ぜ込んでくるのはやめてください。
そして、ススキを背負ったその水着姿で、地面で笑い転げるのは、本当にやめてください。
月下さんが、このハイヒールで踏みつけてやろうかしらって顔して見てますよ!
ドリルに匹敵するかもしれないハイヒールの攻撃力を、身をもって味わう羽目になっちゃいますよ!
「つま先ドリルかぁ……」
え?
もしかして、やってみたいとか思ってます?
はっ! そういや、そうだった。紅桃ってば、見た目は闇底一の可憐系美少女だけど、本当は男の子だった。
や、やめてー!
せっかくの可憐系美少女なのにー!
つま先にドリルつけて、妖魔と戦ってる姿とか、地面にめり込んでいく姿とか、見たくないー!
中身が男の子なのは、本当に男の子だから、しょうがないけど!
見た目だけは、可憐なままでいてほしい!
いや、まあ、紅桃の自由だけどさー!
でも、希望は希望として主張しておく!
「いや、でも、ないか……。そういうのは、月見の仕事だよな。うん」
お、思いとどまった!
よかった!
そして、理由が月見サンの方が似合いそうだからって…………。
うん。でも、分かるよ。
月見サンがやる分には、あたしも止めないかな。
心の底から、止めないかな!