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第165話 カケラと生霊少女

 そして、始まる、怒涛の質問ターイム!


 心をくすぐるワードを投下されて、キラキラに火がついてしまった生霊少女の質問は、なんていうか激しかった。

 滾るようなパッションを感じる。

 方向性は違うけど、心春ここはるに匹敵するくらいの熱量だ。

 その熱意に押されて、月下げっかさんは口を挟みたいけど挟むタイミングが掴めず、ただ質問に答えるしかないカンジになっちゃってますよ。


「世界のカケラということは、全部集めれば、新しい世界が創れるとか、そういうことですか!?」

「いいえ。違うわ」


「なるほど。では、ひび割れた世界を修復するためのアイテムとか、そういうことですか!?」

「アイテム……。ま、まあ、そういうこと、ではある……というか、あってほしいわね」


「つまり、みなさんは、洞窟の魔女って人に命じられて、カケラを集めてひび割れた世界を修復する、異世界の魔法少女!? ここは、魔女と魔法少女が住む異世界!?」

「別に命じられてやっているわけじゃないわ」


 生霊少女は、生霊なのに成仏してしまいそうなくらいに、キラキラと輝いていた。

 対する月下さんのテンションは、段々、下がっていく。この子も魔法少女になるなら、どうせ、その内その辺のことは説明することにはなるんだろうから、後か先かの話だと思うんだけど。

 お返事が何となく投げやりなのは、あれかな? あたしと同じで、某キノコを思い出して萎えちゃってるのかなー。それを思い出して萎えるのは分かる。とっても分かる。


「え!? では、魔女と魔法少女は対立しているんですか!? 世界を壊したい魔女と、世界を癒したい魔法少女…………。素敵ですね」

「別に、対立はしていないわ。魔女は、言うなれば中立の立場ね。ただ、闇底の……この世界の行く末を見守るだけの存在なのよ。本人が言うには、だけれど。適宜、情報は寄越すけれど、協力するわけでも、邪魔をするわけでもないわ」


「洞窟に住む、敵か味方か分からない魔女。ああ……、ミステリアスですね……」

「まあ、ミステリアスではあるわね……。胡散臭いともいうけれど」


 洞窟の魔女さんに思いを馳せているのか、生霊少女はうっとりと瞳を潤ませた。おかげで質問の猛攻がようやくストップした。

 うっとりモードの生霊少女を、何ともいえない顔で見つめた後、月下さんは無言で行動を開始した。

 なんと、月下さんは、生霊少女の本体の傍でしゃがみ込み、星砂に埋められた体の、右腕の辺りを掘り返し始めたのだ。

 え、ええ!?

 生霊とはいえ、本人がそこにいるのに、勝手にそんなことしていいの!?

 いくら、トリップ中とはいえ、一応、本人にお断りしてからの方がいいんじゃないだろうか?

 なんて、ハラハラしている内に、作業は終わった。

 星砂の山の中から、肘から先の部分が現れる。

 その手の中には、確かに、カケラがあった。

 血の気を失った真っ白い腕の先、その手の中に、緩い感じでカケラを握りしめている。

 ま、まさか、本人……の生霊がトリップしている間に、無理やり奪い取るつもり……!?…………では、なかったみたい。ほっ。


「話の通り、握りしめているだけみたいね。体内に取り込んで、同化しているわけじゃなくてよかったわ」

「ああ、なるほど。それを、先に確認したかったのね」


 ポツリと零した月下さんに、ベリーが納得したって感じに頷いている。その顔が、ちょっと渋いのは何でだろ?

 ん? え?

 どういうこと?

 もしかして、あたしだけが分かってない?

 月華つきはな…………は、分かっていないっていうより、どうでもよさそうな顔しているな。それは、それで、何でだろ? いつもの月華なら、その子を魔法少女にすることに、もっと積極的になる気がするけど……。


「ま、もしも、その子の体内にカケラが取り込まれていたとしたら、月華の力を分け与えることには、反対していたわね」


 どこが苦々しい、雪白ゆきしろの声が響いた。

 それは、分かっていないあたしへの説明というよりは、トリップしている張本人以外のみんなへ向けた言葉のようだった。

 もう一人の張本人である月華は、我関せずの顔をしているけれど、月下さんとベリーの二人は、分かっているって感じに頷いている。その二人の顔も、苦々しい。


 え?

 やっぱり、分かんない。

 なんで? どういうこと?


 誰か、説明、プリーズ!

 プッリーズ!!


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