なんで。どうして。
どうして、この子がカケラを取り込んでいたら、
教えて? プリーズ!
――――の気持ちを込めて、あたしは三人を順番にじっと見つめる。
そのセリフを言ったのは只今合体中の
じっ。
じっ。
じっ。
そしたら。
月下さんとベリーの二人も、月華を……正確には、月華と合体中の雪白を見つめだした。
あれ? もしかして、二人も分かっていない?
それとも、月華に関係することだから、ここは雪白先生にお願いしますということなんだろうか?
みんなにつられて、あたしも月華に視線を流す。
じー。
じー。
じー。
視線の集中砲火を浴びているのに、月華は全然動じていなかった。
さすが、月華。
まあ、集中砲火の先は、月華本体じゃなくて、合体中の雪白の方なんだけど。
で。その雪白はといえば。
なぜか、沈黙を貫いていた。
どうしたんだろう?
自分でいうのもなんだけど、こういうのはいつものことなわけだし、察してお答えしてくれてもよさそうな気がするのですが、それとも言いたくないことなのかな?
問い詰めるべきなのか、流すべきなのか分からなくて、とりあえずベリーに助けを求めようと思ったのだけど。
チラッとベリーに視線を走らせると、ベリーは何やら考え込んでいた。
じっと月華・雪白ペアを見つめながら。
問い質すか流すかを迷っているわけではないみたいだった。
迷っているんじゃなくて、考えているんだ。
たぶん、そう。
雪白が沈黙している理由。それから、カケラと魔法少女の合体NGの理由を。
考えがまとまったら、あたしにも分かるように教えてくれるかもしれない。それを待つことにするか。
んー。でも、それならそれとして。
結局、この子はどうするの?
このままにしておくのも、どうかと思うんだけど。
で、今度は月下さんにチラッとしてみる。
月下さんは、そんなあたしに気が付いて、細い顎に人差し指をあてながら苦笑した。
「まあ、カケラの力にはよく分からないところが多いし。カケラを取り込んだ身で月華の力まで取りこんだら、何か予想もつかないことが起こるかもしれないでしょう? きっと、雪白はそれを心配したのじゃないかしら?」
「あ、は、はあ。えーと、つまり。カケラの力と魔法少女の力の合体による副作用を心配したってことですか?」
この子のこれからのことを尋ねた(無言だけど)つもりだったんだけど、月下さんは雪白に向けた最初の無言質問のことだと思ったようだった。そもそもの、始まりの無言質問。
聞い……てないけど、聞いたつもりのことと違う答えが返って来て、あたしは少し戸惑ったけど、そっちについても教えてくれるならもちろん知りたいので、変に混ぜっ返したりはせずに、あたしなりのまとめを伝えると、月下さんは「あら」って顔をした。
星空の割には、いいことを言うじゃないって感じの「あら」だ。
あたしだって、やるときはやるのだ。
「そう、そういうことよ。あとは、カケラの影響が月華本人や、月華と契約している魔法少女たち全員に及ばないとも限らないから、それを恐れた……ってところかしら?」
「え? どうして、そういうことになるんですか?」
「その子と契約を交わせば、月華とその子には繋がりが生じる。もしも、その子がカケラの影響を受けていれば、契約という繋がりによって、月華にもカケラの力が影響するかもってことよ」
「ん、んん。つまり、カケラを取り込んだ子と契約すると、月華本人は別にカケラを取り込んだわけじゃないのに、カケラを取り込んだのと同じになっちゃうってことですか?」
「ええ、まあ、大体そんな感じね。まあ、そうなる可能性があるというだけで、実際にどうなるかは分からないけれど。雪白としては、そんな危険は冒したくないってことでしょうね」
「なるほど。雪白お母さんは心配性っていうことですね」
「…………そうね」
「あ。でも、だったら、もう問題ないってことですよね? この子はカケラを握りしめているだけで、取り込んだわけじゃないですし。あの子が夢見る文学少女トリップから戻ってきたら、契約のことを説明するんですよね?」
なるほどなー。大体、何となく分かった。
とりあえず、納得して。
でも、それなら、この子が魔法少女になっても何の問題もないってことだよね?
と、確認の意味を込めて月下さんを見つめたら、月下さんはなぜか曖昧に笑った。
「それが、そういうわけでもないのよねぇ」
なんて、言いながら。
えー?
まだ、なんか問題があるの?
考えすぎじゃないんですか?
もういいから、思い切ってやっちゃいましょうよ?
ほら。
アンズよりもウメが安いって言うもんね?
ね?