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第55話 因縁……果 僕達はみえない糸で繋がっている③


「え? 今日はちょっと…ごめんね。」


「今日はどうしたの?」

松には悪いと思いつつも、クオリアは食い下がってみた。


「あ、そうそう! キーちゃん? あたしね、トランプっていうおもちゃ持ってるんだよ。 明日持ってくるね」


「うん、楽しみ。」

クオリアはそう返事をしたが、頭では違う事を考えていた。



(松ごめんね)

クオリアは松と別れた後、心の中で何度もごめんねと呟きながら、

家に帰る彼女の後をつけることにした。


そして、見てしまった……。

それは汗水垂らして泥んこになって働く松の姿だった。


「ちょっと松! もうすぐ暗くなるっていうのに、 こんなところであなたは一体何をしているの?」


「アハハ、見られちゃったか。 あたしだけじゃ無いんだよ。 あたしより幼い子やおじいちゃんおばあちゃんもいるんだから。

この島に住む人はね、お金を持ってる人以外はみんな、 砂糖きびの栽培の仕事をしているの」


「そんな…まさか。」

クオリアは目の前の驚愕の光景にただただ驚くしか無かった。


「あなた、寝ている時間と私と会っている時以外は もしかして、

ずっと働かされているんじゃない?」


「ま、まあね」

松は恥ずかしそうに、そして落ち着きなく、 目をキョロキョロさせていた。


「学校は?」


「行って無い」


「それはひどい! そんなところにいなくていいよ。一緒にどこかへ行こう。」


「ありがとう。 あたしもそうしたい気持ちはやまやまなんだ。

でもね、そうはいかないんだ」


「どうして?」


「あたしが逃げ出すと、代わりにあたしのお父さんやお母さんが罰を受けるから。

それにね、以前薩摩藩の役人様に意見し抗議した村人がいるんだけど、その人ね、役人達数人に暴行されて死んじゃったの……」


「酷い! 殺人事件じゃない!訴えましょう!」


「ありがとう。でもそれも無駄なの」


「どうして?」


「警察は薩摩のお役人様とぐるだから。 不慮の事故とか、正当防衛ってされるに近いないよ」


「そんな……酷すぎるわ」


バサッ


クオリアは、松の足元に紙が落ちたことに気付いた。

「松? 今ズボンのポケットから何か紙のようなものが落ちたわよ」


「キーちゃん、教えてくれてありがとね」


「どういたしまして。 ところで、松はどうしてその開封済の手紙を大事そうに持ち歩いているの?」


「これはね、あたしのお兄からの手紙なの」


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