ある日、イナツナは、華の住む洞穴を訪れる。
彼女がここで一人暮らしをしていることを知ってからというもの、彼はずっと心を痛めていた。
そしてついに彼は勇気を振り絞り、目の前の華に告げる。
「華、聞いて?実は俺、君のこと、ずっと心配してたんだ。
華はこの暗い洞穴でずっと、不思議なヤマネコと一緒に暮らしてたんだろ?」
華は驚き、イナツナを見つめる。
「ねえ、どうしてそんなことわかるの!?」
「華、本当にごめん。実は……」
イナツナは、こっそり様子を見ていたことを華に正直に打ち明けた。
そして、村の長に頼んで、華のために新しい住居を建ててもらう約束をとりつけ、そこを住居として自由に使って欲しいと華に提案しする。
華は最初は戸惑ったが、イナツナの真剣な表情を見て、彼を信じることにした。
村人たちの温かい協力のもと、華のための住居が建てられることになった。
村人総出で華の住む住居の建築が始まった。
まず、男たちは力を合わせ、大きな木を数本切り倒した。
そしてその木を柱や
藁葺き屋根の材料を作る者は、手際よく藁を束ね、屋根を
土壁を作る者たちは、土に特殊な石を砕いたものを混ぜ、粘土状にしたものを、柱の間に塗り込んでいく。
子供たちは、土を運んだり、藁を運んだり、小さな手でできる作業を手伝う。
女たちは、男たちが作業しやすいように、食事や飲み物を用意し、休憩の合間に温かい汁物や握り飯を差し入れる。
村人たちは皆、華のために、心を込めて作業を行った。
藁葺き屋根は、太陽の光を浴びて輝き、土壁は、雨風をしっかりと防いでくれる。
柱や梁は、力強く家を支え、家族を守ってくれる。
こうして、村人たちの愛情と技術が詰まった、華の住居が完成した。
それは、長の住居に次ぐ、村で一番大きくて立派なものとなった。
華は、完成した住居を見て、涙を流して喜んだ。
「皆さん、本当にありがとうございます。こんなに素敵な住居を作ってくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。」
村人たちは、華の笑顔を見て、自分たちの苦労が報われたと思った。
そして、皆で手を取り合い、喜びを分かち合った。
華の住居は、村人たちの絆を深める、大切な場所となった。
華はさっそく新しい新居に一人住み始める。
しかし、華の心のどこかには、満たされない気持ちもあった。
それは、姉のナシミへの切ない思い。
姉さんは、この新しい住居の完成を一緒に喜んでくれるだろうか?
夕暮れ時、華は家の縁に座り、遠くの山々を眺める。
温かい風が吹き、鳥のさえずりが聞こえた。
幸せなはずなのに、なぜだろう、心の奥底には寂しさが残ってしまう。
「姉さん、ナシミはどこに行っちゃったんだろう…」
華は、静かに呟く。
新しい新居に住まう華。
しかし、村人の中に、そんな華の幸せを妬む者がいた。