イナツナが華の境遇の話を村の長に話したことで、華は立派な住居に住むことができている。
しかし、その時、村の長はイナツナから彼女の姉の姿に化けた猫の話も聞いていた。
そして、ある日、華の元に長の兵士が尋ねてきた。
「化け猫の件はイナツナから聞いているかね?
今回捕獲こそ出来なかったが、この村から追い払うことができた。
毒矢が体に刺さったようだったし、高い崖下まで追い込んだから、化け猫といえどももう助からないだろう。だから安心しなさい。」
それを聞いた華は、無言で兵士の胸ぐらをつかむと、ナシミの居場所を問い詰めた。
「ぐ、ぐるしい」
「さ、答えてよ、早く!!」
「逃げたから今はもうどこにいったかわからない」
「じゃあ、最後に見たのはどこ!?
答えなさい!!」
すると、兵士は苦しみながらその場所を自白した。
「や、山の入口の洞穴だ……」
それを聞くやいなや、彼女は急いでナシミが最後にいた場所へと走って向かう。
華は目的の場所へと着いた。
すると、そこには何故か彼もいる。
「イナツナ、情報提供ご苦労様だった。礼を言う。」
長の兵と彼との会話だった。
「え?何これ?一体どういうこと?」
華は困惑する。
イナツナは華を元気づけるつもりで村の長を頼ったが、その事がかえって華を傷付けてしまった。
「い、イナツナ……?」
華のイナツナを呼ぶ声は震えていた。
「ねえ、嘘……でしょ?お願いだから嘘だと言って」
華は地面に倒れ込み、両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。
「どうして…どうしてこんな酷いことするの…!?」
彼女は虚無感に包まれ、心は氷つくように冷え切った。
姉の温もりが、いままでどれだけ自分にとって大切だったのかを、この瞬間、彼女は深く理解した。
「華ごめん、本当にごめん。俺、まさかこんなことになるなんて、知らなかったんだ。」
「うるさい!! 言い訳するなー! もう、私の事はほっといて! イナツナ、あんたなんか、あんたなんか!」
華はイナツナに貰った大切な首飾りを外すと、衝動的に投げようとする衝動にかられた。
しかし、歯を食いしばり思いとどまる。
「大っ嫌い! イナツナ、あんたなんて大っ嫌いよ!」
「華……。」
華とイナツナ。二人の心はすれ違う。
お互いなかなか素直になれず、そして……。
そのまま二人は疎遠になっていった。