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第21話 二人のすれ違い

イナツナが華の境遇の話を村の長に話したことで、華は立派な住居に住むことができている。

しかし、その時、村の長はイナツナから彼女の姉の姿に化けた猫の話も聞いていた。


そして、ある日、華の元に長の兵士が尋ねてきた。


「化け猫の件はイナツナから聞いているかね?

今回捕獲こそ出来なかったが、この村から追い払うことができた。

毒矢が体に刺さったようだったし、高い崖下まで追い込んだから、化け猫といえどももう助からないだろう。だから安心しなさい。」


それを聞いた華は、無言で兵士の胸ぐらをつかむと、ナシミの居場所を問い詰めた。


「ぐ、ぐるしい」

「さ、答えてよ、早く!!」

「逃げたから今はもうどこにいったかわからない」

「じゃあ、最後に見たのはどこ!?

答えなさい!!」

すると、兵士は苦しみながらその場所を自白した。

「や、山の入口の洞穴だ……」

それを聞くやいなや、彼女は急いでナシミが最後にいた場所へと走って向かう。


華は目的の場所へと着いた。

すると、そこには何故か彼もいる。


「イナツナ、情報提供ご苦労様だった。礼を言う。」

長の兵と彼との会話だった。


「え?何これ?一体どういうこと?」

華は困惑する。


イナツナは華を元気づけるつもりで村の長を頼ったが、その事がかえって華を傷付けてしまった。


「い、イナツナ……?」

華のイナツナを呼ぶ声は震えていた。

「ねえ、嘘……でしょ?お願いだから嘘だと言って」

華は地面に倒れ込み、両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。


「どうして…どうしてこんな酷いことするの…!?」

彼女は虚無感に包まれ、心は氷つくように冷え切った。

姉の温もりが、いままでどれだけ自分にとって大切だったのかを、この瞬間、彼女は深く理解した。


「華ごめん、本当にごめん。俺、まさかこんなことになるなんて、知らなかったんだ。」


「うるさい!! 言い訳するなー! もう、私の事はほっといて! イナツナ、あんたなんか、あんたなんか!」

華はイナツナに貰った大切な首飾りを外すと、衝動的に投げようとする衝動にかられた。

しかし、歯を食いしばり思いとどまる。


「大っ嫌い! イナツナ、あんたなんて大っ嫌いよ!」


「華……。」


華とイナツナ。二人の心はすれ違う。

お互いなかなか素直になれず、そして……。

そのまま二人は疎遠になっていった。




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