日が明けて、華が目を覚ますと、イナツナの家の温かい布団の中に寝ていた。
彼女は一瞬、ここがどこなのかを理解するのに時間がかかったが、すぐに昨日起こった出来事を思い出し、心がざわめく。
華がイナツナに昨日の出来事を聞くと、妙な胸騒ぎがさらに強くなった。
昨日感じたあの匂い、どんなときも自分を守ってくれた姉の匂いと似ている。
いいや、きっと間違いない。
彼女は意を決して昨日の生贄の場所へと向かう。
洞穴と川の間の沼地。そこには、人を飲み込める程に巨大なナマズの丸焦げの亡骸だけが横たわっていた。
しかし、あのナシミの姿はもうそこにはない。
その日以来、華の前にナシミが現れることも、姉が姿を現すこともなかった。