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第32話 幼馴染①

その日はまるで彼の門出を祝福するかのように、澄み切った青空がどこまでも広がっている。

イナツナは乗船する船の手前で、見送りに来た仲間の三人と思い出話に花を咲かせていた。


「イナツナ、あっちに行っても僕たちのこと忘れないでよ」


「ああ。」


「イナツナ、今までありがとうな。向こうに行っても頑張れよ!3年後、僕たち、お前より強くなってるからな。覚えとけよな。

な、タエマもそれでいいだろ?」


「お、おう!」


「ああ、望むところだ!」


「言ったな!」


はははは♪


「ちょっとカザシネ!タエマ!

二人とも、華を呼んで来てくれない」

ホタルは二人に頼んだ。


「は、はい。」


「僕も?二人いるのかな?」

「タエマ、ちょっと耳かせ。」


「何?」


小声で「お前空気読めって!」


「あ、うん。」


「耐稲行くぞ。」

「うん。風稲くん、待ってよ〜! 」



「ねえ、ダオ・チンイナツナ、ホントに行っちゃうの?」


「あ、うん。せっかくフォー・チュイホタルとも仲良くなれたのに、こんな形で君ともお別れする形になっちゃって、本当にごめんね。」


「ううん。医者というダオ・チンイナツナの夢に近づく一歩なんだから、堂々としてていいんだよ。」


「ありがとう、フォー・チュイホタル。」


「ねえ、絶対帰ってきてね。」

ホタルは彼の両手を握り、上目遣いに彼を見る。


ダオ・チンイナツナの手、大きくて温かいな。


この手を離す日がくるなんて、まだ信じられない。


でも、キミの夢を応援する。


だから、笑顔で送り出さなきゃ。)


すると突然、ホタルの脳裏に、華との会話がよみがえった。


“お互い本当に大切に思ってることは、ちゃんと言葉に出さなきゃだね”


よし!


ホタルは覚悟を決めた。


「ねえ、ダオ・チンイナツナ

手、繋ご。」

ホタルは、そう言うと彼の手をぎゅっと握りしめる。


(今、この瞬間を永遠に記憶に刻みつけたい。

潮風と波の音、そして稲青の温もり。

きっと、この感覚を忘れない。)


「ほら、ダオ・チンイナツナこっち来てよ。ほらほら〜♪」


「あ、ちょっと。背中から押すなって!」


それから二人は、波打ち際をゆっくりと歩いた。

潮風が彼女の長い髪をなびかせ、波の音だけが響く。


(この静かな時間、永遠に続けばいいのに……)

ホタルはそう願わずにはいられなかった。


「ねえ、ダオ・チンイナツナ

こう言うのって、いつぐらいぶりだっけ?」


「え、何が?」


「こうやって二人で手を繋いで澄み切った青空と水平線を眺めるの。久しぶりだよね。クス♪」


(私とダオ・チンイナツナ

二人は幼いの頃から、いつもずっと一緒にいたような気がする。


それはまるで、海と空のように、切っても切れない存在だった)


「あ〜!私、悔しいな。」


フォー・チュイホタル、泣いてる?」


「ううん、大丈夫。私だってさ、今だから言うけど、あんたの事ずっと好きだったんだよ。

気付いてた?」


「ああ、知ってたよ。フォー・チュイホタル。君は俺と一番長い付き合いだからな。」


「そうよ。私はいつだってあんたと一緒だった。

私達が家族と一緒に大陸から船でこっちに来たとき覚えてる?」

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