その日はまるで彼の門出を祝福するかのように、澄み切った青空がどこまでも広がっている。
イナツナは乗船する船の手前で、見送りに来た仲間の三人と思い出話に花を咲かせていた。
「イナツナ、あっちに行っても僕たちのこと忘れないでよ」
「ああ。」
「イナツナ、今までありがとうな。向こうに行っても頑張れよ!3年後、僕たち、お前より強くなってるからな。覚えとけよな。
な、タエマもそれでいいだろ?」
「お、おう!」
「ああ、望むところだ!」
「言ったな!」
はははは♪
「ちょっとカザシネ!タエマ!
二人とも、華を呼んで来てくれない」
ホタルは二人に頼んだ。
「は、はい。」
「僕も?二人いるのかな?」
「タエマ、ちょっと耳かせ。」
「何?」
小声で「お前空気読めって!」
「あ、うん。」
「耐稲行くぞ。」
「うん。風稲くん、待ってよ〜! 」
「ねえ、
「あ、うん。せっかく
「ううん。医者という
「ありがとう、
「ねえ、絶対帰ってきてね。」
ホタルは彼の両手を握り、上目遣いに彼を見る。
(
この手を離す日がくるなんて、まだ信じられない。
でも、キミの夢を応援する。
だから、笑顔で送り出さなきゃ。)
すると突然、ホタルの脳裏に、華との会話がよみがえった。
“お互い本当に大切に思ってることは、ちゃんと言葉に出さなきゃだね”
よし!
ホタルは覚悟を決めた。
「ねえ、
手、繋ご。」
ホタルは、そう言うと彼の手をぎゅっと握りしめる。
(今、この瞬間を永遠に記憶に刻みつけたい。
潮風と波の音、そして稲青の温もり。
きっと、この感覚を忘れない。)
「ほら、
「あ、ちょっと。背中から押すなって!」
それから二人は、波打ち際をゆっくりと歩いた。
潮風が彼女の長い髪をなびかせ、波の音だけが響く。
(この静かな時間、永遠に続けばいいのに……)
ホタルはそう願わずにはいられなかった。
「ねえ、
こう言うのって、いつぐらいぶりだっけ?」
「え、何が?」
「こうやって二人で手を繋いで澄み切った青空と水平線を眺めるの。久しぶりだよね。クス♪」
(私と
二人は幼いの頃から、いつもずっと一緒にいたような気がする。
それはまるで、海と空のように、切っても切れない存在だった)
「あ〜!私、悔しいな。」
「
「ううん、大丈夫。私だってさ、今だから言うけど、あんたの事ずっと好きだったんだよ。
気付いてた?」
「ああ、知ってたよ。
「そうよ。私はいつだってあんたと一緒だった。
私達が家族と一緒に大陸から船でこっちに来たとき覚えてる?」