〔※現在〕
瓦礫の山を彷徨う翔太は、ふと、朽ちかけた建物の隅に小さな木箱が置かれているのを見つけた。近づいてみると、それは丁寧に磨かれた古い木箱で、蓋には小さな真鍮のプレートが嵌め込まれている。「翔太へ」と刻まれた文字が、彼の目を釘付けにした。
震える手で蓋を開けると、中には一枚の紙片が折り畳まれて入っていた。それは、妹の祥子から翔太宛ての手紙だった。
翔太は、ゆっくりと手紙を開いた。
お兄ちゃんへ
元気にしていますか? 私は、天国で毎日お兄ちゃんのことを考えています。
あの時、私がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかったのに。ごめんなさい。
お兄ちゃんが私を助けてくれようとしたこと、私はちゃんと分かっています。
でも、私はお兄ちゃんに犯罪者になってほしくなくて、
ついあんな行動に出てしまいました。
それがお兄ちゃんを苦しめることになってしまって本当に本当にごめんなさい。
お兄ちゃんが私を殺したなんて、そんなこと、私は全く思っていません。
お兄ちゃんは、誰よりも優しくて、強い人だから。
いつかまた笑顔のお兄ちゃんに会いたい。また、一緒に笑いたい。
その為に先ずは私の分まで幸せに生きてください。
そして、いつかまたお兄ちゃんと
出会える日を信じています。
ずっと、ずっと、お兄ちゃんのことを待っています。
祥子
手紙を読み終えた翔太の目には、大粒の涙が溢れていた。
祥子の温かい言葉が、彼の凍り付いた心を溶かしていく。
「祥子……」
翔太は、手紙を胸に抱きしめた。今まで、彼は妹を殺してしまったという罪悪感に苛まれていた。
しかし、祥子の手紙は、彼に温かい光を灯してくれた。
「ありがとう……祥子……」
翔太は、静かに呟いた。彼の心は、罪の意識から解放され、温かい愛で満たされていた。
その時、美嗣が翔太に駆け寄ってきた。
「翔太、どうしたの? その手紙……」
美嗣は、翔太の手にある手紙に気づいた。
「妹さんからの手紙……?」
翔太は、頷いた。そして、祥子からの手紙の内容を美嗣に話した。
美嗣は、翔太の話を静かに聞いていた。そして、最後にこう言った。
「翔太…あなたは、妹さんのことをずっと愛していたのね。」
翔太は、再び涙を流した。
「ああ……」
翔太は、心の底からそう思った。
その時、老人が二人に近づいてきた。
「翔太……」
老人は、翔太に優しく声をかけた。
「僕は最近、謎の男性の力を借りて偶然君たちみんなの過去に行った時があってね。不幸な過去を変える為に。
その時に過去の君の妹に会ったんだ。
しかし、僕も最初はいろいろ試したが、人が亡くなる運命はどうしても変えることは出来なかった。
本当に申し訳無い。
そこで僕は祥子さんに何の目的で来たのか理由を聞かれたんだよ。
僕はもちろん彼女に黙っているつもりだった。
君は近い未来死ぬなんてそんな残酷な事、口が避けても言える訳は無かったんだよ。
だけど、彼女は僕の目を見て感じ取ったらしくて、言われたよ。
誤魔化さないで。
私にはなんとなくわかるよ。
私、近い未来死ぬんでしょって。
彼女は、未来に起こるはずのあの光景を夢で何度も見ていたらしいんだ。
彼女の瞳は真剣だった。
兄の心を助けて欲しいと。
そこで、僕は今の君の事を祥子さんに正直に話したんだよ。
すると、事情を知った彼女からこの手紙を君に渡すように言われたんだ。
君は、もう過去に囚われる必要はない。君は、君のままでいいんだ。」
老人の言葉は、翔太の心に深く響いた。
「ありがとうございます」
翔太は、老人に頭を下げた。
その時、仲間たちが翔太の周りに集まってきた。
「翔太……」
マダラが、翔太に優しく声をかけた。
「僕たちは、ずっと一緒だ。」
削磨が、翔太の肩に手を置いた。
「辛い時は、いつでも頼ってくれ。」
躍太が、翔太に笑顔を向けた。
「僕たちは、家族だ。」
優が、翔太の手を握った。
「一緒に、未来を切り開こう。」
仲間たちの温かい言葉が、翔太の心を包み込んだ。
「ああ……ありがとう……みんな……」
翔太は、仲間たちに心から感謝した。
その時、翔太は、自分が一人ではないことに気づいた。彼には、共に支え合える仲間たちがいた。
翔太は、未来に向かって、力強く歩き出すことを決意した。
※次話からは現在〜回想とマダラの物語が語られます。