〔※現在〕
薄暗い部屋の片隅で、忘却の少女・美嗣は膝を抱え、震えていた。
意識が現実と過去を行き来し、まるで激流に翻弄されているかのようだ。
頭痛がズキズキと痛み、吐き気がこみ上げる。
「……どうして……どうしてこんなことを……」
美嗣の瞳には、深い絶望が宿っていた。
鮮明な記憶が、まるで昨日の出来事のように蘇る。
それは、決して忘れようとしても忘れられない――消えない記憶の奔流だった。
〔※美嗣/回想〕
夕食のテーブル――かつては、家族団欒の温かい笑い声が響いていた場所。
しかし、その日の食卓には、異様な緊張感が漂っていた。
両親の目は、どこかぎこちなく、鋭くぎらついている。
まるで仮面をかぶっているかのように――。
そして、ある夜――。
私は紬を呼び出した。
しんと静まり返る部屋の中、二人は言葉を交わす。
だが、その会話の内容は、美嗣の記憶から次第に消えつつあった。
ただ――。
断片的に蘇る言葉の数々が、私の心を深くえぐる。
そして、次の朝――。
家族は皆、無残な姿で発見された。
私の手には、血のついたナイフが握られている――。
警察は、私が家族を殺害したと結論づけた。
しかし――。
私には、その時の記憶がまったくない――。
私は……怪物なの……!?
私は、何度も何度も自問自答を繰り返した。
しかし――心の奥底では、何かがおかしいと感じていた。
なぜ、こんなことをしてしまったのか――。
なぜ、記憶の一部が欠けているのか――。
〔※現在〕
美嗣は、自分の過去と向き合おうとする。
しかし、それはあまりにも辛く、苦しい作業だった。
過去の記憶が、美嗣の心を鋭く切り裂いていく――。
それでも、美嗣は諦めなかった。
自分の過去を受け入れ、そして、償わなければならない――。
「……私は……償わなければならない……」
そのまだ小さな体に、強い決意を宿し――。
美嗣は過去の罪と向き合い、そして未来へと歩き出すことを決意した。
※次話では美嗣が更に記憶を思い出した後の、
その知られざる回想シーンが語られます。