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第67話 美嗣の真相3 ※紬の回想

〔※紬/回想〕


親戚夫婦の家へ帰る途中、私は道に迷った。


見慣れない景色が広がり、どちらへ進めばいいのか分からない。


不安が胸の奥からじわじわと広がっていく。


どうしよう……私は、どうすれば……。


その時、背後から優しい声が聞こえた。


「お嬢ちゃん、どうかしたの?」


振り返ると、そこに立っていたのは白髪の老人だった。


穏やかな笑みを浮かべ、静かに話しかけてくる。


「道に迷ったのかい? よかったら、僕が案内しよう」


その言葉に、心の緊張が少しほぐれた。


「はい……道に迷ってしまって……」


私は、おじさんに事情を説明する。


親戚夫婦の家へ帰る途中であること、そして道に迷ったこと。


話を聞き終えると、おじさんは温かく微笑んだ。


「そうか。それは大変だったな。よし、僕と一緒に来なさい」


そう言いながら、おじさんは車のドアを開けてくれる。


静かに助手席へ乗り込むと、車はゆっくりと走り出した。




揺れる車内で、昨日の出来事が脳裏を巡る。


美嗣のこと。


両親のこと。


そして――目撃した、あの恐ろしい光景。


気づけば、涙がこぼれそうになっていた。


美嗣……美嗣……。


何度も、心の中でその名前を呼ぶ。


すると、おじさんがふと気づいたように、優しい声をかけてきた。


「辛いことがあったのかい?」


その言葉に、抑え込んでいた感情が溢れ出す。


私は泣きながら、おじさんにすべてを話した。


美嗣のこと。


両親のこと。


そして――私が目撃した、あの残酷な光景。


おじさんは静かに耳を傾けてくれた。


それがどれほど救いだったか、言葉では言い表せない。


そして、話し終えた私に、そっと言葉をかける。


「辛かっただろう。よく頑張ったね」


その一言が、胸の奥へ深く染み込んでいく。


涙が止まらなくなった。


しばらく泣いた後、私は震える声で言った。


「ありがとうございます……あなたのおかげで、助かりました」



おじさんは、柔らかく微笑む。


「気にすることはないよ。困った時は、いつでも僕を頼りなさい」


その言葉が、心の奥をそっと温めていく。


※次話も紬の回想が続きます。



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