〔※回想/紬〕
おじさんは、私から事情を聞いた。
美嗣が亡くなったこと――そして、両親が狂気に染まってしまったことを。
深く息を吐きながら、おじさんは悲しげに目を伏せた。
小さな命が、あまりにも儚く、そして残酷に奪われた。
胸の奥が締め付けられるような感覚が広がる。
私の震える声、涙で濡れた瞳――そのすべてが、おじさんの心を痛めた。
「美嗣ちゃんを……蘇らせよう」
静かでありながら、力強い言葉だった。
私は、息を呑む。
「え……? ど、どういうことですか?」
涙で濡れた瞳を、大きく見開く。
信じられない。
そんなことが、本当に可能なのだろうか。
「わしは長年、人の記憶を研究してきた。そして、その記憶をデータ化し、別の体に移植する技術を開発した」
おじさんは、遠い日のことを思い出すように、ゆっくりと語り始めた。
私は、おじさんの言葉に――希望を見出す。
かすかな光が、絶望に閉ざされた心に差し込んだ。
「もしかして……美嗣を……美嗣を蘇らせることができるんですか?」
震える声で問いかける。
もし、それが本当なら――
もう一度、美嗣に会える。
もう一度、美嗣の笑顔を見ることができる。
「ああ。絶対とは言えないけど、その希望はある。
美嗣ちゃんの記憶をデータ化し、それを紬ちゃんの体を元にしたクローンの頭脳に流し込むんだ。
そうすれば、美嗣ちゃんは、再び生きることができる」
おじさんの言葉は、胸の奥に温かい光を灯した。
希望の光が、絶望の闇を照らしていく――
「お願いします! お願いします! 美嗣を蘇らせてください!」
涙を流しながら懇願した。
藁にもすがる思いだった。
美嗣を失った悲しみは、あまりにも深く、耐え難いものだった。
もう一度――美嗣に会いたい。
その願いが、心を焦がす。
おじさんは静かに頷いた。
そして、亡くなった美嗣を研究室へ運び、その記憶をデータ化する。
美嗣の記憶は、膨大だった。
幼い頃の思い出。
両親との楽しい時間。
そして――最期の瞬間。
それらが、まるで走馬灯のように、おじさんの脳裏を駆け巡る。
しかし、おじさんは長年の研究を活かし、それを私の体を元にしたクローンロボットの頭脳と合成することに成功する。
そして――
美嗣は、クローンロボットとして蘇った。
小さな体は、以前と変わらない。
しかし、その瞳には――確かに美嗣の記憶が宿っていた。
「美嗣……!」
私は駆け寄り、美嗣を抱きしめる。
温かい。
そのぬくもりが、私を包み込む――
「お姉ちゃん……」
美嗣の声が、静かに響いた。
涙が頬を伝う。
「美嗣……! 美嗣……!」
何度も名前を呼ぶ。
美嗣は、優しく微笑んで私を見つめる。
「ただいま、お姉ちゃん」
その言葉が、心の奥に深く染みた。
美嗣は、確かに戻ってきた。
けれど――
それは決して、平坦な道ではない。
美嗣の記憶は、データとして再現されたものに過ぎない。
本当に――以前の美嗣と同じなのだろうか?
私は、不安を抱えながらも、美嗣と共に生きていくことを決意した。
もう二度と――美嗣を失わない。
その誓いを胸に――
***
※次話はいったん話が現在に戻ります。