〔※現在〕
「紬お姉ちゃん……私も思い出した……」
美嗣は、静かに、それでいて確かな口調で言った。
その言葉に、私は息を呑む。
美嗣も――あの日の記憶を、取り戻したのだ。
あの恐ろしい記憶を。
美嗣は、ゆっくりと語り始めた。
〔※美嗣/回想〕
***
親戚夫婦に迷惑をかけないようにと、お姉ちゃんが手紙を書き、留守を伝えた。
そして、私とお姉ちゃんは、おじさんのもとで一週間ほど世話になることになった。
おじさんは、優しかった。
いつも、私たちに穏やかな笑顔を向けてくれた。
おじさんの家での生活は、温かく、安心できるものだった。
けれど――私は、どこか寂しかった。
早く、お義父さんとお義母さんに会いたかった。
お姉ちゃんも、同じ気持ちだったようだ。
そして、一週間後。
私たちはおじさんに感謝を伝え、親戚夫婦の家へ戻った。
それから、一か月後。
恐れていたことが、ついに起こった――。
***
※美嗣の回想は次回へ続きます。