〔※回想/美嗣〕
私は、偶然友達の家に泊まることになり、親戚夫婦の家を空けていた。
友達の家では、楽しい時間を過ごした。
ゲームをしたり、おしゃべりをしたり、美味しいものを食べたり――心が弾むひととき。
けれど、心のどこかで、ずっと親戚夫婦のことが気になっていた。
早く、お義父さんとお義母さんに会いたい。
その思いを胸に、私は友達の家を後にした。
そして、親戚夫婦の家に帰る。
「ただいまー!」
玄関の扉を開け、明るい声で呼びかけた。
しかし、返事はなかった。
「あれ……? 誰もいないのかな……?」
首を傾げながら、家の中へ足を踏み入れる。
そこで、違和感を覚えた。
家の中が、異様なほど綺麗に片付けられていたのだ。
まるで、誰も住んでいないかのように、整然としている。
「おかしいな……」
胸の奥に、じわりと不安が広がる。
家の中を歩き回るが、どこにも親戚夫婦の姿はなかった。
「一体、どこへ行ったんだろう……?」
ますます不安が募る。
その時――
鼻を突くような、鉄の匂いが漂ってきた。
「っ……!」
息を呑む。
鉄の匂い――
それは、血の匂いだった。
※美嗣の回想は次回に続きます。