〔※回想/美嗣〕
私は、親戚夫婦の家から、慌てて飛び出した。
不安で、頭の中は真っ白だった。
どこへ行けばいいのかも分からず、ただ、ひたすらに走り続けた。
そして、たどり着いたのは、紬お姉ちゃんと泊めさせてもらっていたおじさんのラボだった。
みんなは私を温かく迎えてくれだが、おじさんは今日は留守らしい。
私はベンチに座り込み、深く息を吐き出す。
どうしよう……私は、どうすればいいんだろう……。
その時、ふと、あることが頭に浮かんだ。
両親のことだ。
両親は、親戚夫婦のことを快く思っていなかった。
「あいつらは、私たちからお金を奪っている」
そんな言葉を、私は聞いたことがある。
もしかして……。
もしかしたら……。
そして――お姉ちゃんも……。
両親が、お姉ちゃんや親戚夫婦を殺したのかもしれない。
そんな……! そんなはずはない……!
私は、強く首を横に振った。
殺されたなんて、考えたくない。
けれど、両親の行動は、どうも怪しかった。
やはり――両親が怪しい。
そう思った私は、考える。
まずは、自分の記憶を頼りに、両親の家を突き止めよう。
しかし――もし、いきなり両親の家に乗り込んで問い詰めたとしても、証拠がなければ追い返されるだけだろう。
両親は、きっと、何も教えてはくれない。
それどころか、私を……。
私は、恐怖に駆られた。
今の両親は、狂気に染まっている。
もはや、人間の心を持ち合わせていないのかもしれない。
そんな両親に、私はどう立ち向かえばいいのか。
深い絶望に飲み込まれそうになる。
その夜、私は眠れなかった。
天井を見つめながら、何度も同じことを考えた。
紬お姉ちゃんのこと、親戚のおじさん、おばさんのこと、そして――父のこと。
朝が来ても、私の悲しみは消えなかった。
それどころか、ますます深まっていった。
そして、私はようやく認めた。
紬お姉ちゃんを殺したのも、親戚夫婦を殺したのも――
他ならぬ、自分の父親だったという事を……。
私は絶望と悲しみに打ちひしがれ、
その心に、深い傷が刻まれた。
けれど――諦めることはできなかった。
お姉ちゃんのためにも、親戚夫婦のためにも。
私は、両親を止めなければならない。
私は復讐を果たすため、壮絶な戦いに身を投じることになる。
その夜、私は紬お姉ちゃんが出てくる夢を見た。
***
※次回は、美嗣が見た紬の夢のシーンから始まります。