〔※美嗣/夢の中〕
***
私は、夢を見た。
それは、あまりにも鮮明で――そして、恐ろしい夢だった。
紬お姉ちゃんと、親戚夫婦の三人が、両親にナイフで襲われる夢。
夢の中で、私は必死に叫んだ。
「やめて! お父さん! お母さん! やめて!」
けれど、両親は私の声に耳を貸そうとはしなかった。
狂気に染まった瞳で、ナイフを振り上げる。
そして、紬お姉ちゃん、親戚のお義父さん、お義母さんの体を――何度も何度も、突き刺した。
血が、辺り一面に広がっていく。
三人の顔は、苦悶に歪んでいた。
私は恐怖で、体を震わせる。
夢だとわかっていても、体が勝手に反応してしまう。
あまりにも現実的で――逃げ場のない悪夢だった。
両親は、三人を殺害した後、遺体を運び始めた。
そして、山奥へと向かって歩いていく。
私は、夢の中で三人の後を追った。
たどり着いたのは、廃墟と化した村だった。
かつて人が住んでいたその場所は、今では誰もいない。
建物は朽ち果て、草木が生い茂る――ひっそりとした静寂が広がっていた。
両親は、廃村の一軒の家に三人の遺体を運び込む。
そして、庭に穴を掘り始めた。
私は、息を潜め、その様子を見つめる。
両親は穴を掘り終えると、遺体をそこへ投げ入れた。
そして、静かに土を被せる。
最後に、墓標を立てた。
そこには、ひっそりと文字が刻まれていた。
「眠れ、安らかに」
私は、夢の中で泣き叫んだ。
「お姉ちゃん……! お義父さん……! お義母さん……!」
けれど――
もう、誰も答えてはくれなかった。
***
その直後、私はハッと目を覚ました。
〔※美嗣/回想〕
夢から覚めても、私はしばらくの間、動くことができなかった。
体が、鉛のように重い。
悪夢の余韻が、心を締め付ける。
(あれは……夢じゃない……)
私はそう思った。
きっと、あれは――現実だった。
両親は、本当に紬お姉ちゃんと親戚夫婦を殺したのだ。
そして、山奥の廃村に埋めたのだ。
私は、復讐を誓った。
必ず、両親に償いをさせる。
そう、心に固く誓った。
けれど、それは想像を絶するほど困難な道のりになるだろう。
両親は、もはや人間の心を持ち合わせていないのかもしれない。
そんな両親に、私はどう立ち向かえばいいのか。
深く絶望した。
けれど――諦めることはできなかった。
紬お姉ちゃん、親戚夫婦のためにも――
私は、両親を止めなければならない。
復讐を果たすため、壮絶な戦いに身を投じることになる。
***
※次話も美嗣の回想が続きます。