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第72話 悪夢 ※過去の美嗣の夢の中〜美嗣の回想

〔※美嗣/夢の中〕


***


私は、夢を見た。


それは、あまりにも鮮明で――そして、恐ろしい夢だった。


紬お姉ちゃんと、親戚夫婦の三人が、両親にナイフで襲われる夢。


夢の中で、私は必死に叫んだ。


「やめて! お父さん! お母さん! やめて!」


けれど、両親は私の声に耳を貸そうとはしなかった。


狂気に染まった瞳で、ナイフを振り上げる。


そして、紬お姉ちゃん、親戚のお義父さん、お義母さんの体を――何度も何度も、突き刺した。


血が、辺り一面に広がっていく。


三人の顔は、苦悶に歪んでいた。


私は恐怖で、体を震わせる。


夢だとわかっていても、体が勝手に反応してしまう。


あまりにも現実的で――逃げ場のない悪夢だった。


両親は、三人を殺害した後、遺体を運び始めた。


そして、山奥へと向かって歩いていく。


私は、夢の中で三人の後を追った。


たどり着いたのは、廃墟と化した村だった。


かつて人が住んでいたその場所は、今では誰もいない。


建物は朽ち果て、草木が生い茂る――ひっそりとした静寂が広がっていた。


両親は、廃村の一軒の家に三人の遺体を運び込む。


そして、庭に穴を掘り始めた。


私は、息を潜め、その様子を見つめる。


両親は穴を掘り終えると、遺体をそこへ投げ入れた。


そして、静かに土を被せる。


最後に、墓標を立てた。


そこには、ひっそりと文字が刻まれていた。


「眠れ、安らかに」


私は、夢の中で泣き叫んだ。


「お姉ちゃん……! お義父さん……! お義母さん……!」


けれど――


もう、誰も答えてはくれなかった。


***


その直後、私はハッと目を覚ました。


〔※美嗣/回想〕


夢から覚めても、私はしばらくの間、動くことができなかった。


体が、鉛のように重い。


悪夢の余韻が、心を締め付ける。


(あれは……夢じゃない……)


私はそう思った。


きっと、あれは――現実だった。


両親は、本当に紬お姉ちゃんと親戚夫婦を殺したのだ。


そして、山奥の廃村に埋めたのだ。


私は、復讐を誓った。


必ず、両親に償いをさせる。


そう、心に固く誓った。


けれど、それは想像を絶するほど困難な道のりになるだろう。


両親は、もはや人間の心を持ち合わせていないのかもしれない。


そんな両親に、私はどう立ち向かえばいいのか。


深く絶望した。


けれど――諦めることはできなかった。


紬お姉ちゃん、親戚夫婦のためにも――


私は、両親を止めなければならない。


復讐を果たすため、壮絶な戦いに身を投じることになる。


***


※次話も美嗣の回想が続きます。



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